6月19日(金)に、東京六本木ヒルズ内にてGoogle「イノベーション東北」が主催するワークショップ「ひらかれた町と働こう!」が開催された。この日は、地域と関わる仕事に興味を持つ約100人の参加者が、宮城県女川町と、地域創生の先鋒として注目を集める島根県海士町の取り組みに対してアイデアを出し合った。
「みなさんは、女川町と海士町の職員です」
東北で新しいチャレンジをしたい事業者と、東北を支援したい人とをマッチングする「イノベーション東北」。サポーターは、テレビ会議やオンラインでのやりとりで、住んでいる場所を問わずに東北の事業サポートに関わることができる。今回のワークショップは、このイノベーション東北でマッチングされている「自分の特技を生かして地域と関わる新しい働き方」を体験してもらおうと企画されたもの。
過去にも同様のワークショップを開催したことがある「イノベーション東北」だが、今回のイベントの特徴は、島根県海士町とのコラボレーションを行ったこと。「これまで東北の事業者と主に個人のマッチングを行ってきたイノベーション東北ですが、今日は町と町のマッチングにも挑戦したい」と、司会のGoogle松岡さん。「みなさんは、今日1日、女川町と海士町の職員だと思って、2つの町のチャレンジを応援する方法を考えてください」と説明される。
「女川創業きっかけツアー」のアイデアを募集します
女川町のチャレンジは、行政、町民、企業をつなぐ活動をしているNPO法人アスヘノキボウ代表の小松洋介さんから発表された。女川町は2015年3月にフューチャーセンター「Camass」をオープン。コワーキングスペースを併設し、打ち合わせやイベントに活用できるこのフューチャーセンターをハブとして、町内外の多様な人たちが集える場にしたいと考えている。
そこで今回は、このCamassで町内外の多様な人たちが女川で事業を興したり、プロジェクトをスタートするための「創業支援プログラム」を作りたいとプレゼン。「その足がかりとなる、『女川創業きかっけツアー』の開催へのアイデアを考えてくれませんか」と訴えた。
参加者は、役場の各部署に見立てたグループに分かれ、観光促進課ではツアーのアイデア、広報宣伝課ではツアー説明会のアイデア、意匠計画課では女川ガイドブックのアイデア、そして地域交流課ではツアー後の東京でのコミュニティ活動のアイデアを練った。
25分の話し合いののち、各課の「課長」がアイデアを発表。「ダッシュ村のように、女川に手作りのセカンドハウスを持ってもらっては?」「自分で撮影した女川の写真を貼ったり、女川で感じたことを書き留める、体験型ガイドブックを作ろう」「人が集まるほど安くなる乗り合いバスで女川ツアーに参加してもらおう」などのアイデアが出た。
海士町の信岡良亮さんは都会といなかの関係を考えていくための場、「島の大使館」を東京につくりたいとプレゼン。参加者からは「入国審査を行おう」「島流チケットで海士を体験してもらおう」「海士町のキンニャモニャ祭りで使うMYしゃもじを配ろう」などの案が発表された。
地方創生と復興のトップランナーの「テーマ設定力」
参加者たちは、その後、女川町と海士町の名産品を肴に乾杯し、懇親会がスタート。自身も参加者とともにテーブルにつき、ディスカッションに加わった須田善明女川町長は、「面白い人たちが集まりつながるからこそ、面白いアイデアが出るのだと感じた。町の7割が被災した現在、女川町は何をしても社会実験になる。ぜひ女川で一緒にチャレンジを進めてほしい」と挨拶。
また、アスヘノキボウの小松さんは「生徒数が増えている海士町の高校の例から、学校と地域活性の密接な関係性を学ぶことができた。これからも、東北に限らず、地方創生をすすめる市町と交流し、知見を交換しあいたい」と話した。
海士町は地方創生の、女川町は復興のトップランナーと言われる。2つの町に共通しているのは、「自分たちでなんとかしなくては」と自ら発信し行動し、よそものを巻き込んでいること。漠然と「まちに来てほしい」「新しいまちづくりをしたい」と訴えるだけではなく、議論を活性化させる工夫に秘訣があると感じた。今回女川町は、チャレンジを「創業支援」の仕組みづくりに設定するとともに、ツアー・ガイドブック・事後のコミュニティ施策とより具体的な課題設定を行った。こうした「具体的なテーマ設定」の力が、多くのサポーターを巻き込む力なのではないだろうか。
イノベーション東北では、今回の女川町と海士町のチャレンジのサポーターをホームページでも募集している。
文/佐藤友美