株式会社パソナグループ(本社:東京都千代田区、以下「パソナグループ」)は、「パソナグループ2015年度東北役員研修」を6月27日から2日間の日程で岩手県沿岸地域で行った。今回の研修はパソナグループ各社の役員が対象で、初日は10〜15人ずつ4つのグループに分かれて陸前高田市、大船渡市、釜石市内の各所を視察。東日本大震災後にパソナグループが行った人材育成・就労支援事業等で構築したつながりを活かしながら、市や団体との意見交換を行った。
地域課題という情報と、企業のアイデアを渡し合う
取材したグループの研修テーマは「農業×6次産業×就労支援」。陸前高田市内のカフェ「フライパン」にて、地元産の食材を用いた昼食をとったのち、震災直後に結成され、IT事業と農業・若者支援による人材育成を目指す一般社団法人SAVE TAKATAの取組みについて、代表理事の佐々木信秋さんと理事で事務局長の松本玄太さんが全体に向けて説明。松本さんからは、現在生産から販売にまでかかわっている米崎りんごの販路拡大と担い手育成において、パソナグループと連携していきたいイメージについてもプレゼンテーションが行われた。それを受け、参加した役員からは具体的な質問や提案が続出。パソナグループの重視する「女性」という視点から、「地元の主婦の方々に繁忙期に手伝ってもらうことから農業の裾野を広げていく方法もあるのでは」などの声も挙がった。
このあとには、実際に米崎りんごを栽培している樋ノ田果樹園へと移動し、りんご農家の熊谷賢一さんから、米崎りんごの栽培方法や震災後の状況について説明を受けながら視察。再び会場の「フライパン」に戻ってからは、米崎りんごの生産から販売までを担う6次産業化における課題解決方法を、パソナ役員が一緒に話し合うワークショップを開催。人、農業という視点から2つのテーブルに分かれて、それぞれアイデアを出し合った。両チームからは情報発信の方法や内容、また地域、企業、買い手すべてへのメリットを意識したマーケティング提案などが発表され、佐々木さんからは、「企業連携の具体的な手法について大きな気付きになった」とのコメントも。課題を共有することで、積極的な意見交換が交わされていた。
「東北には、埋もれたままの素晴らしい資源が山ほどある」
パソナグループでは、2014年4月にも意見交換と視察を目的とする東北研修が行われているが、今回の役員研修は、2015年4月に設立された株式会社パソナ東北創生(本社:岩手県釜石市)がプロデュースする初めての企業研修となる。パソナ東北創生代表取締役社長の戸塚絵梨子さんは「東北で活動される地元の方々にとって、この研修が、普段は出会わない人たちと出会い、協力者を得る直接のきっかけになれば」と話す。
昨年に続き研修に参加した、パソナグループ代表取締役グループ代表の南部靖之さんは、「ここへ来ると私自身学びがある」と東北研修の意義を挙げる。「パソナグループでは、これまで東日本大震災の復興支援に取り組んできたが、今後はさらにあらゆる場所で『人財』を見つけて育て、『人』の力で東北の産業を育てていきたい。また、パソナグループが淡路島で取り組んできた“人材誘致”による雇用創造の取組みを、今度は東北へと持ち込み、地域と地域、地域と技術とをつないでいきたい」と構想する。
「地方創生については、今後も社として特に注力していきたい」と話す南部さん。なかでも東北ではどんなところに可能性を感じ、重視しているかを尋ねると「東北には特に、埋もれたままの素晴らしい資源が山ほどある。だから私はここで化学反応を引き起こしたい。そのとき反応を起こすには、外からやってくる人と内側の人とが混ざり合うことも必要。東北の課題解決に取り組む事業を支援する『東北未来戦略ファンド』も立ち上げたが、今後はさらに東北をフィールドとする起業家を、パソナグループの仲間として支援していきたい」と語った。
今回の研修会場となったカフェ「フライパン」は、パソナグループの陸前高田市就労創出支援事業においてプロジェクト長を務めた天野栄司さんが、3年間の滞在期間中に「フライパン」店主の熊谷克郎さんと知り合い、店づくりを応援するなど交流を深めたことが、場所提供のきっかけとなっている。
個人の関係性を起点に、役員が東北へと足を運び、企業全体で情報とアイデアを共有していくこの取組み。東北での役員研修が、人財を通じて社内外へと情報を広げるきっかけとなり、さらに多様なアイデアとなって東北へ向かう循環を生むことを期待したい。
文/井上瑶子
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