「WORK FOR 東北」は、被災地の自治体等への民間企業による社員派遣、個人による就業を支援し、人材の面から復興を後押しするプロジェクトです。
復興の現場に社員を派遣している企業、および、赴任した方々のインタビューを紹介します。
Q:どのような経緯で、石巻市役所で働くことになったのでしょうか。
A:以前は東京のweb制作会社で5年ほど働いていました。震災後、ボランティアや視察ツアーで気仙沼市、陸前高田市、南相馬市などに来たことはありましたが、知れば知るほど、住んでみないと分からないことがたくさんあると感じました。
地元の雇用を奪わない形で復興の現場でできる仕事を探して「WORK FOR 東北」の説明会に参加しました。そこで現在の上司と出会い、私ができることがあると言われて、ここで働くことになりました。それから前職を辞め、2014年5月から着任しました。
Q:どんな業務に携わっていますか。
A:ICTに関することなら何でもという感じですが、現在動いているのは主に3つです。
1つは、石巻市の産品を販売する「石巻いっぴんマーケット」というECサイトの立ち上げです。石巻市6次産業化・地産地消推進センターと協働し、2015年2月18日にβ版を立ち上げました。
2つめはテレワーク、在宅就業を支援する仕組みの推進です。具体的に動き出したばかりで、システムの仕様書を書くなどしています。
3つめが、緊急雇用創出事業に関する業務です。ICTに関わる2つの事業、「企業データベース化推進事業」と「若手ICT起業家育成事業」を管理しています。この2つの事業は、私が着任してすぐに入札が行われたので、入札に立ち会うという民間企業では絶対にできない経験もできました(笑)。この業務は、自分が手を動かすというよりは委託事業者からの報告書をチェックするなど管理が中心です。
Q:お仕事や生活の環境はどうでしょうか。
A:着任してしばらくの間、仕事はあるのに、周りの皆さんが忙しすぎて私に指示が出せないために仕事が回ってこない状態がありました。何か役に立ちたいと思い、自分が得意なこと、できることを伝える、いわば“営業”活動をして、少しずつ任せてもらえるようになり、仕事が面白くなってきました。
また、パソコンの操作などに関しては知識があるので、今では「パソコンで分からないことがあれば兼俊に聞け」と商工課以外からも頼りにされるようにもなりました。最初に“営業”をしたから、周囲とのコミュニケーションがよくなったと感じています。今は充実しており、私は環境、人にとても恵まれたと思っています。
住居は市が用意してくれた、市役所から徒歩5分ほどの借り上げ社宅に住んでいます。私は東京出身なので、石巻は空が広いのが新鮮でとても気に入っています。
Q:過去のお仕事の経験は役立っていますか。
A:ECサイトのバイヤーの経験や、システム構築の流れを分かっていることは役に立っています。
一方で、行政の仕事は規模が大きく、また、ECサイトの立ち上げにしても、テレワークのシステムの仕様書を書くにしても、今までやったことのあるものよりも難度の高い仕事です。部署内で、ICT関連の業務は兼俊に、という感じになっているのですが、私が全てわかっているわけではないので、勉強しながら業務を行っています。
また、市職員は、税金を使っているというとても強い責任感を持っており、民間の仕事の進め方と全く違います。私はまだ公務員としての自覚が足りないと感じているので、とても勉強になります。
Q:今後の目標を聞かせてください。
A:復興の一助になりたいと思って石巻に来ましたが、私一人ががむしゃらに頑張っても復興が進むものではないということも分かりました。
もしかしたら外からは復興が進んでいないように見えるかもしれませんが、役場の職員は残業、休日出勤をして日々頑張っています。そんな中で、私は今できることをやる、それから、「期待されていること+2」くらいの仕事ができたらと思っています。
商工課は現在12人の職員がいますが、地元の職員は5人しかいません。応援職員の割合が多いんです。私も応援職員でいつか帰る立場ですが、将来を考えると地元の職員がやるべきこと、地元の職員でないとできないことがあるので、彼らが動きやすい環境を作りたいと思います。
(2015年2月13日取材)
記事提供:日本財団「WORK FOR 東北」
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