震災以降立ち上がった東北の団体のリーダーの元に、若手経営人材「右腕」を3年間で約200人派遣してきた「右腕派遣プログラム」。東北で活躍する「右腕」とリーダーのインタビューを紹介します。
震災発生後に立ち上がったふくしま連携復興センターの、第2創業期を支えるメンバーの一人として「コーディネーター」「広報」分野で活躍した元岡 悠太さん。前編に引き続き、右腕の活動後の様子を語っていただきました。
― 現在はどのような活動をされていますか。
現在は、いわき市に拠点を置くNPO法人3.11被災者を支援するいわき連絡協議会(愛称:みんぷく)に出向し、福島県の復興公営住宅のコミュニティづくりの支援(福島県生活拠点コミュニティ形成事業)に携わっています。
復興公営住宅は平成26年度中に19棟528戸が建設され、今後3年間でトータル約5000戸の住宅が出来上がる予定です。
その復興公営住宅内におけるコミュニティづくりと、復興公営住宅が立地する地域との繋がりをつくるために、福島県内の福島市、郡山市、いわき市、会津若松市の4つの拠点を設けて、コミュニティ交流員を配置して本事業に取り組んでいます。現在のコミュニティ交流員は全員で10名(2014年12月時点)。復興住宅に居住することになった住民のニーズを聞いて、イベントを開催したりする、地域のコーディネーターの役割を担うべく、活動しています。
私はその中で、「コミュニティ交流員の活動にあたってのサポート」、「コミュニティ交流員と事業全体総括を繋ぐSV(スーパーバイザー:福島・会津エリアマネージャー)」として勤務しています。
避難者のみなさんはまず避難の段階で仮設住宅や借上げ住宅等に入ることでコミュニティが再編成されましたが、また災害復興公営住宅に入居することによってコミュニティが再編成されることになります。避難者同士の軋轢や避難地域と受入地域の軋轢などがあると耳にすることもありましたが、中間支援をメインに行ってきたので、直接住民の方と関わる機会が少なく、自分ではそうした場面に遭遇することがあまりありませんでした。そこで、本当にそうした軋轢があるのかを自分の目で確かめて、その上でサポートしていきたいと考えています。
まずは、復興公営住宅に入居する前に交流会を開催したり、復興公営住宅が建設されている各市町村と連携したりすることを通じて、誰もが挨拶を交わすことができるコミュニティの仕組みづくりからしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
これも新しい事業なのでゼロからつくっていく事業ですが、自分一人ではできないことも、皆で協働すればできると思っています。福島県は大変広く、エリア毎に気候も風土も異なります。地元の方々と連携して、福島、郡山、いわき、会津の拠点ごとの特色を生かして、そこに合わせてカスタマイズしたサポートをしていきたいと思います。
― 現在のチャレンジの中で活かせている右腕としての経験はありますか。
実際、ふくしま連携復興センターで経験したことを活かせています。中でも、たくさんの会員のNPOの皆さんとコミュニケーションを図り、セクターを越えたネットワークで働いていた経験が大きいと思います。SVは行政・全体総括とコミュニティ交流員とのコーディネ―ターの役割を担っています。ヒアリングの際に、交流員や住民のニーズを掴めるようになったこと、セクターを越えたネットワーキングを作ることは、この期間中に身につけられたスキルだと思っています。
― 右腕派遣プログラムに参加した意義とその中で得られたもの
私にとって右腕派遣プログラムは、「チャレンジ」の場でした。
これまで培ってきた経験が通用するのか、またそれを活かして新しいものに取り組む・ともに作り上げていくことを、目指しています。
また、ふくしま連携復興センターでの経験を通して、「受け入れる力」が強くなったのではないかと思っています。東京に居た頃は、外部の環境や誰かのせいにしていたことも多かったのですが、今は困難があればそこからどうすべきか切り替えて自発的に考えて行動できるようになりました。
人と本気でコミュニケーションを取ることは、とても大切なことですが、非常に大変なことでもあります。復興に携わる仕事は、住民の皆さんの声に耳を傾けることです。悩みを共有してくださることは非常に嬉しいですが、住民の方から非常に重く受け止めなければならないお話を聞く場面も少なくありません。そうした時には、今のプロジェクト・事業に携わるメンバーでその内容を共有し、共に考える場を持つようにしています。また、ふくしま連携復興センターでは、リセットやコントロールの手法も学べたと思っています。今ではオンとオフをはっきり分けて、オフのときには、全く異なる自分の世界に入ることでリセットしながら、今のチャレンジと向き合っています。
― 右腕派遣プログラムを考える方へのメッセージをお願いします。
一歩踏み出すと何かしらのものが見えると思います。自分の目の前に広がる世界が、きっと変わって見えます。むしろ変化がないとおかしいと思えるくらい、私の目の前の世界が変わりました。福島の皆さんは懐がとても深く、福島という場所は大変だけどとてもおもしろい場所だと思います。
― 最後に、元岡さんの今後の展望を教えてください。
20代は福島をフィールドに頑張りたいと考えています。福島の役に立ちたいという想いもありますが、それだと漠然としているので自分に良くして下さった人たちへの恩返しとして、常に彼らの顔を思い浮かべながら、彼らの喜びつながることをしていきたいと思います。
― ありがとうございました。
記事提供:みちのく仕事(NPO法人ETIC.)
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