震災以降立ち上がった東北の団体のリーダーの元に、若手経営人材「右腕」を3年間で約200人派遣してきた「右腕派遣プログラム」。東北で活躍する「右腕」とリーダーのインタビューを紹介します。
ほどよい塩加減に、しっかりと感じられる素材のうまみ。
思わず、「ごはん、おかわりっ!」という声が食卓に響きそうな商品。それを作っているのは、「リアスフードを食卓に。」プロジェクトです。
山の幸も海の幸も、全国に届けたい!
「山の養分が海に流れることで形成される豊かな漁場。そうした自然風土が作り出す海の幸、山の幸をあわせて、私たちは”リアスフード”と呼んでいます」と話すのは、代表を務める清水敏也さん。「この鮭ほぐしをはじめとした“ほぐしシリーズ”も、まさに山や里の恵みであるごはんといっしょに食べてほしいという思いで作られたものです」
あくまで海産物の素材の良さを売りにしている他の水産加工メーカーとは一線を画す考え方。山の幸も、里の幸も、海の幸もあわせた食卓そのものを提案しています。
「人と人の関わり」を、食を通じて作る
このプロジェクトは、気仙沼で水産業を営む4社による新しい商品開発、販路開拓を行なうプラットフォーム。4社は震災以前から協同組合として連携を図ってきましたが、震災を機に「三陸の食の豊かさを伝えていきたい」という想いでプロジェクトを立ち上げました。
「それまでは、完成された商品を世に提供することが、最大の価値だと思っていました。しかし本来は、商品に至る過程、その商品の背景が大事だったんですね」(清水さん)
だからこそ「リアスフードを食卓に。」の事業は商品開発にとどまりません。高校生を対象としたレシピコンテスト「高校生リアスフードグランプリ」から、親子で楽しめる「塩作り」などの食育事業と、食を中心にさまざまな人と人をつなぐ「関わり作り」を行なっています。
高校生に教わった大切なこと
清水さんには、この活動をはじめてから、忘れられないエピソードがあると言います。それは第一回目のフードグランプリのとき。見ず知らずの高校生同士、最初はぎこちなかった関係が、いっしょに食事することで、打ち解けたこと。
「食は人と人を和ませ、つないでいく力がある。ただ“食べる”だけではなくて、背景にある想いを想像し、自然と会話が生まれる商品を、私たちは作らなければならないと再認識させられたんです」(清水さん)
ストーリー性に富んだ自慢の商品
その象徴ともいえるのが、気仙沼特産のサメの肉を使った「気仙沼フカフカ団子」。現在、都内のレストランやホテル、さらには気仙沼市内の学校給食にも使われるほどの人気商品となっています。じつはこの商品、「高校生リアスフードグランプリ2014」で地元気仙沼の高校生が考え、グランプリを受賞した案を商品化したものです。
これからの世代を担う高校生が、シェフなどのさまざまな人と関わることから生み出したアイディア。そのバトンを「リアスフードを食卓に。」が受け継ぎ、これまでに培った経験や技術をもとに業務用商品として完成させていく。
「この商品が給食としてさらに子どもたちに伝わっていく。まさに私たちの想いが伝わる商品になりました」(清水さん)
気仙沼から全国へ。リアスの可能性は無限大。
「リアスの恵みをまるごと楽しんでほしい」というメッセージの込められた『ほぐしシリーズ』。
そして、多くの人の想いが背景に詰まっている『気仙沼フカフカ団子』。
ブランドキャッチフレーズは、「リアス。届けたい理由がある」。
それぞれの商品に触れたとき、この意味を汲み取り、思わず人に話したくなります。人から、人へ。そうしてこのブランドの広がりが生まれています。
「リアスという言葉の意味は入り江。そう考えると、日本全体が大きな入り江でもある。これからも新しい商品を通じて、物語をお届けしたいです」(清水さん)
気仙沼から三陸へ。そして全国へ。“リアスフード”の可能性は無限に広がります。
書き手・写真:浅野拓也 取材協力:リアスフードを食卓に。
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