人材育成を通じて市民生活をよくするダイナミックな仕事

[日本財団 WORK FOR 東北]

「WORK FOR 東北」は、被災地の自治体等への民間企業による社員派遣、個人による就業を支援し、人材の面から復興を後押しするプロジェクトです。
復興の現場に社員を派遣している企業、および、赴任した方々のインタビューを紹介します。

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Q.以前はどんなお仕事をされていましたか。

釜石市に来る前は、日本IBMに勤めていました。入社からずっと営業の仕事をしていましたが、39歳の時に病気をしたことで人生観が変わり、人に関わる仕事、人の役に立つ仕事がしたいと考えるようになりました。そこで、人を育てる仕事がしたいと志願し、3年後に人事への異動が叶って人材育成、研修の担当になりました。

その後約10年にわたって、社内研修の企画、開発、講師などを担当していました。

Q.釜石に来られた理由は何だったのでしょうか。

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仕事は大変充実していましたが、大手企業では人材育成も分業になります。現場のニーズを把握し、研修内容を企画設計し、講師として実施し、評価するという一連の流れの全てを担当することはできません。いつか人材育成に関して一気通貫したダイナミックな仕事をしてみたいと考えていました。

そんな中、ちょうど自分がやりたいと思っていた仕事を釜石市が募集しているのを見つけ、応募しました。ラグビーの経験があるのと、社会人大学院に通っていた時に指導教授と一緒に震災後の釜石を調査活動で訪れたこともあり、以前から釜石には縁を感じていたということもきっかけになりました。

Q.釜石に来られてからの仕事についてお聞かせください。

釜石市役所で、職員の人材育成を担当しています。2015年4月に着任し、9月に「人材育成計画」を策定しました。策定にあたっては、職員約400名を対象に37項目にわたるアンケートを実施し、さらに30名にはインタビューも行いました。

また、毎月1度、部署横断で選抜された管理職が集まる「人材育成会議」を開催し、人材育成に関する議論や進捗報告を行っています。忌憚ない意見が出されるので耳の痛いこともありますが、上司にあたる部長や課長、そしてチームメンバーがサポートしてくださっています。会議では私の考えが足りなかった部分は修正していただけますし、皆さん真剣に参加してくださるので人材育成に関して建設的な意見を聞くことのできる貴重な場です。

多くの職員に忙しい中で本来の業務でないことに協力してもらっているので、それに対して結果で返さなければ次はないと言い聞かせ、細い糸をつないでいくような気持ちで取り組んでいます。

Q.今後はどのような業務を予定されていますか。

地方公務員法が改正され、2016年の4月から全国の地方公務員に人事評価制度の導入が義務付けられました。釜石市としては当法改正に対応しながら、より職員の人材育成に着目し、9月に作成した人材育成計画をベースに、この評価制度の設計を行いました。評価のための評価ではなく、人材育成のための評価であることを意識した制度ができたと思っています。

運用ガイドも作成し、1月には市役所の管理監督職全員、約220名を対象に「釜石市リーダー研修」を実施して人材育成計画や人事評価制度について共有を行います。説明会ではなく研修としたのは、リーダーこそが組織文化を作るという考え方から、一方的に説明するのではなくディスカッションして考え方を共有しようという意図からです。

研修は、実施すること自体が目的ではありません。人が変わって、その変化がどう仕事に影響していくか、市役所であれば市民生活にどのように影響していくかが重要です。その点では、まさに希望していたダイナミックな仕事に携われていると感じます。

Q.釜石の生活や職場の環境はいかがですか。

来てすぐ思ったのは、人が温かいということです。仮設住宅に住んでいるのですが、通勤途中にお隣さんが必ず見つけて挨拶してくれたり、小学生が挨拶してくれたりと、朝から元気をもらっています。また、休日には地元の人たちと一緒に趣味のトライアスロンの活動をしています。

仕事で有難いのは、プロジェクトに専念できていることです。復興業務も多く周囲の皆さんは日常の仕事で本当に忙しい状況です。本心では手伝って欲しいと思うこともあるのかもしれませんが、釜石市として人材育成を中長期的に取り組まなければいけない重要項目と位置づけてプロジェクトを立上げ、私を採用して専念させてもらっていることには、本当に感謝しています。
今後についてはどうお考えでしょうか。

民間出身者が自治体の人材育成に関わる例はあまりありませんので、今後どういう形になるか、まさにチャレンジです。私の任期は、人材育成プロジェクト集中期間である3年間です。私がいなくなると困る、ではいけないと考えていますので、何らかの形できちんとプロジェクトの成果を残したいと思います。

記事提供:日本財団「WORK FOR 東北」