東日本大震災と向き合い3月11日を「はじまり」に変えた30人の夢を掲載した書籍『3.11からの夢』とのコラボ記事です。
とりあえず、部活と勉強がんばります
僕は福島県浪江町で生まれた。
震災があってから、自分が目指す夢というものがなくなってしまった。
震災当時のことは、よく覚えている。地震なんて初めてだった僕はパニック状態で、今目の前で起きていることが信じられなかった。明るかった雲が、一瞬で今まで見たことのない黒色の雲に変わって、恐怖を感じた。「すぐに収まり、また普通の生活ができるだろう」と思っていたのに、地震は強まる一方で、原子力発電所が爆発して、浪江町を出なくてはならなくなってしまった。家族と一緒に車で逃げた。どこに行くのかわからなかったし、これからどう生きていけばいいのかと不安になった。それからは、いろいろな場所を転々とした。
いろんな人に優しくしてもらった。埼玉まで行こうとなったが、夜中にガソリンがなくなって、近くのコンビニでガソリンスタンドが開くまで寝かせてもらった。ずっとお風呂に入れていなかったけれど、埼玉に行って温泉に入らせてもらった。車で眠るのが大変だったので、布団で眠れたのも幸せだった。それから福島県の川俣に戻り、少しだけ小学校に通った。運動場で遊んではいけないと言われていたので、体育館でドッジボールやバスケをしたのが楽しかったけれど、すぐに転校が決まった。次は、南にある矢吹の小学校に行った。ここでは運動場が使えたので、外で思いっきり遊んだ。運動会が楽しかった。
中学は、通うはずだった浪江中学校が二本松に避難しているというので、福島市に引っ越してバスで通った。久しぶりに、浪江小学校の同級生に会った。バラバラになっていたけれど、みんなそれぞれの場所で新しい友達ができていたようだった。
これからは、僕たちが助けてもらった分の恩返しをする番だと思う。そう思えるようになってからは、人の手助けをする仕事がしたいと思うようになった。あと2年で就職。それまではとりあえず、勉強と部活のバドミントンをがんばりたい。目標は、県大会で上位入賞すること。先生や先輩にアドバイスをもらいながら、強くなりたい。
これからも、浪江を忘れずたくましく生きたいと思う。
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記事提供:3.11からの夢(いろは出版)