太平洋沿岸のヤブツバキの北限として知られ、椿の里作りを進める大船渡で6月11日、椿の植樹が行われた。
植樹を行ったのは化粧品会社大手の(株)資生堂と大船渡市の(社福)大洋会。参加者たちは立根町の福祉の里センター周辺で椿の成木20本、苗木56本を、世界の椿館・碁石の林田勲館長のアドバイスを受けながら丁寧に植えていき、「椿の里」の成長を願った。
この日は東日本大震災津波から5年3ヶ月。植樹には資生堂、大洋会、大船渡市、(一社)日本ツバキ協会の会員ら合わせて約50人が参加した。開会行事では戸田公明市長、資生堂の岩井恒彦副社長、大洋会の木川田理事長、日本ツバキ協会の仲村清彦氏があいさつし、大洋会への寄付金目録の贈呈、記念植樹を行った。
資生堂が大船渡で植樹を行うのは平成24年から今回で5回目となる。資生堂の商標が「花椿」であることがきっかけで、椿を市の花としている陸前高田市と大船渡市で活動を始めた。活動の始まりは平成24年9月11日。津波で被災した大船渡市立赤崎中学校の仮設校舎前に、資生堂の社員が赤崎中学校の全校生徒とともに、その年の3年生の生徒数と同じ41本の苗木の植樹を行った。
活動は、植樹だけにはとどまらない。最初に植樹活動を行った赤崎中学校とは Web 会議で椿の生育状況について日常的に情報共有したり、生徒が詠んだ俳句集を毎年制作、贈呈するなど現在も交流を続けている。平成27 年には実から油を搾るワークショップも開催。植樹から収穫、搾油まで一連の産業構造を学習でき、子どもがまちづくりに思いを巡らすきっかけになったと好評で、現在は市内の学校に波及しつつある。
フレグランスウォーターの売り上げの一部は「椿の里 大船渡」の街づくり*に役立てられている。
植樹活動に参加した資生堂サステナビリティ戦略部の加藤剛志氏は、「植えた椿が成長するとともに、大船渡の復興がさらに進んでいる姿を夢見て植えました。今後も継続してお役に立つことができたらと強く感じる機会になりました」とこの日の活動を振り返った。
資生堂では、今年も平成25年度から継続して行っている赤崎中学校生徒への「俳句集の贈呈」を行う他、「椿の里 大船渡」を具現化するための植樹活動に向けた調整等、今後も地元と対話を持ちながら活動を継続していく予定。
※大船渡市には、世界13カ国約550種類の椿が一堂に会する「世界の椿館・碁石」や、東日本大震災津波時に津波が手前で止まったという日本最大・最古のヤブツバキ「三面椿」なども存在し、以前より「椿の里・大船渡」としての発信を行ってきた。その一方で、安価な油の普及に伴い、椿油を食用や整髪料に活用するという地域文化は廃れつつあり、市民の関心は薄れていた。昨年6月より市では、総務省の復興支援員制度を活用し「椿利活用推進支援員」を採用。「椿」を使った観光の活性化と「椿油」を街の産業として育てることを目指し、「椿の里・大船渡」の再生を行政、企業、民間が連携して進めている。
記事提供:復興支援ポータルサイト「いわて三陸 復興のかけ橋」
Tweet