会津電力株式会社
再生可能エネルギーによる社会づくりを目指して、会津地域の有志が立ち上げた電力会社。会津で生み出した電力を会津で消費し、資金を地域内で循環させて、地域の自立を果たすことを目標にしています。現在は会津地域各所に太陽光発電施設を設置。今後、水力、バイオマス発電などにも取り組んでいく予定です。
地震、原発事故、風評被害…住民の悲しみ
江戸時代半ばから230年近くに渡って福島県喜多方市に蔵を構える老舗酒造・大和川酒造店。酒造を継ぐ者は、代々「彌右衛門」の名を継承します。震災が起こったのは、現在会長を務める九代目の佐藤彌右衛門さんが60歳の誕生日を迎える少し前のことでした。
震災とそれに伴うさまざまな出来事は、彌右衛門さんが今までに経験したことのないものでした。地震による直接的な被害はもちろんのこと、福島県内は原発事故による風評被害にも見舞われます。家やふるさとを奪われてしまった人たちの悲しみに触れる度、彌右衛門さんはやり場のない怒りに震えました。
全村避難が決まった飯館村は、彌右衛門さんと縁の深い場所でした。村おこしにと、「どうぞお越しください」という気持ちを込めて「おこし酒」という日本酒を作るなど、20年以上交流が続いていたのです。そんな飯館村にも入ることができなくなってしまいました。「このままではいけない、何か行動を起こさなくては――」彌右衛門さんは地元の仲間たちに呼びかけました。
仲間たちとのつながりから見えた電力会社という道
会津の仲間に声をかけ、福島の現状を改めて分析し、これから何をすべきなのかを話し合う場を設けました。この「ふくしま会議」には、彌右衛門さんと同じく地元を愛する面々が集いました。
彌右衛門さんを含め、原発事故を目にした仲間たちの想いは共通したものでした。「安心安全な電力を使いたい」。会津には、豊かな水資源も、広大な山林もあります。集まったメンバーの中には、太陽光発電の会社を営む人もいました。地元の資源を活用して、自然エネルギーを生み出すことができるのではないか…。
「誰かに任せるのではなく、自分たちの力で電力を作ろう」。こうして会津電力が生まれました。
電力の地産地消は会津に暮らす皆のためになる
彌右衛門さんのイメージは、“地産地消”です。会津で作った電気を、会津で消費する。これまで電力の購入に充てていたお金を会津のために使うことができるようになり、さらに発電施設ができればそこに雇用も生まれます。地域内で資金を循環させ中に良い循環を作って、地域の自立を実現させたいと考えていました。
まずは地元の企業に協力を求めました。町役場、地銀をはじめ、地元企業を訪問し、会津電力の理念を訴えかけます。福島県が「脱原発」を宣言したこともあり、多くの企業が会津電力の考えに賛同し、支援を申し出てくれました。また、地元企業だけでなく、多くの著名人が協力の声を上げたことも彌右衛門さんたちにとって強い後押しとなりました。
こうして2013年8月に会津電力株式会社を設立。1期目は太陽光発電に取り組むべく、会津地域50カ所に発電施設を設置しました。各地に分散させたのは、災害リスクを少しでも減らすためです。
未来の子どもたちに安全なエネルギーを
会津電力のロゴマーク、カラフルな手にはそれぞれ意味があります。緑はバイオマス発電、赤は太陽光発電、水色は風力発電、茶色は地熱発電、青色は水力発電を示しています。太陽光発電を軌道に乗せ、少しずつほかの発電にも挑戦していく予定です。
太陽光発電所と併設した学習施設も設立しました。未来を担う子どもたちに再生可能エネルギーについて学んでほしいと考えたのです。かつて彌右衛門さんがそうだったように、「電気が何から作られているのか」を普段の生活で考えることはあまりありません。エネルギーを色分けし、それぞれのエネルギーがどのように作られているのかを見てもらうことで、自然エネルギーへの理解を深めたいと考えています。
福島県は、2040年までに県内で必要なエネルギーのすべてを自然エネルギーで賄うという方針を立てています。未来の子どもたちが安心して使うことのできる安全なエネルギーを作るために。会津電力の挑戦は始まったばかりです。
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