Beyond 2020〜これからの社会、そして私〜 新・連載シリーズが始動します。

「よきことを、よきひとへ。」

東北復興新聞は、「復興現場の今がわかる『好事例』共有メディア」として2012年1月16日に創刊した。

人口減少、少子高齢化、過疎化、一次産業・コミュニティの衰退、エネルギー問題…
10年、20年先の社会課題が露わになった東北で「創造的復興」に挑む革新的な取り組みが、日本の新しい社会・価値観をつくっていく。そんな思いで、小さな組織ながらも丹念に現場の声を拾い上げてきたつもりだ。

創刊から約6年、そして震災から7年を迎える来年3月をもって、本紙はその活動に終止符を打つ。そして最後に、今も復興の最前線で活躍する計50人の声を届ける新連載をスタートする。

「国も社会もただの概念で実態がない。唯一リアルなのは個々の人。人が寄り添い合って、国や社会ができている」。取材先で出会った、ある人の言葉を思い出す。

振り返ると、私たちの取材活動は復興現場で奮闘する「人」に魅了されることの連続だったように思う。彼/彼女たちは「行動する市民/社会人」のように見えた。この広い世界でたった一人の「自分/個人」という存在と向き合い、生き方を問い、社会における役割を見出し、行動する人たちだ。

「社会が変わる」。よく耳にするこの言葉は、実は捉えどころのない響きに聞こえる。でも、こう言い換えるとリアリティが増してくる。
「人が変わる」。個人の意志や情熱が周囲に伝播し、その積み重ねが地域や社会を形成し、歴史を動かしてきたのではないだろうか。

2011年3月11日。あの日を境に、東北は、日本はどう変わったのか。それとも変わらずに、押し戻されてしまっているものはないのだろうか。
今一度、復興の現場で今も奮闘する市井の人々のリアルな声を、彼/彼女らが懸命に生きた時代を、しっかりと刻んでおきたい。

この先を見据えると、2020年に東京五輪・パラリンピックが開催される。世界的なイベントに向かって、ヒト・モノ・カネが大きく動いていく。そして、さらにその先…東北は、日本は、果たしてどんな社会になっているだろうか。復興に携わる人々の提言・展望を聞いてみたい。そんな思いから、この連載シリーズを立ち上げることにした。

あらゆるモノや情報が一気に目に飛び込んできてはすぐに消化され、「確かなもの」をつかみづらい世の中だ。漠然とした「生きづらさ」や将来への不安を感じながら、日々を過ごしている人は少なくないだろう。
そんな混迷の時代だからこそ、内なる自分と向き合い、問いかけたい。「あなたにとって、本当に大切なモノはなんですか?」

「心」で生きる。
これが自分自身の人生を豊かにし、実態のない「社会」に息を吹き込むことにつながっていくのではないだろうか。この連載が、そんな「生き方」の道標にもなれば幸いである。