[ローカルキャリアカフェ] 丹波とキャリアを考える人が集まる場に。
キャリアを考える町というブランディング
横田さんは、Iターン組の1人。出馬を決意したのが投票日の10日前、総費用約30万円、という型破りな選挙戦を経て、昨年11月に市議会議員になった。彼が始めた取り組みの一つが「ローカルキャリアカフェ」。地方と都市部を結びつけ、多様な「暮らす・働く」を考えるイベントだ。
ローカルキャリアカフェは大阪などの都市部で開催され、キャリアの選択肢として地方へのIターンを考えている参加者と、都市から丹波へのUターン・Iターンを実現させた話者が、住居や仕事、幸せについて、とことん語り合う場。12年10月から月1回ペースで開催、毎回30~50名程度の参加者が集まる。参加者の顔ぶれは、18歳か75歳まで、職種も学生や主婦から経営者などさまざまだ。
横田さんから運営を引き継ぎ、現在任意団体ローカルキャリアカフェの代表を務める川人ゆかりさんは、「温度感のある情報を伝えられる場にすることにこだわっている」という。参加者の理解度、満足度を高めるために、スタッフは常に会場の様子に目を配る。話者として参加するU・Iターン経験者は経歴や性格が偏らないよう人選。「地域に住み、自分に合った暮らしを選び納得して生きている人のポジティブなパワーはとても魅力的。そうした『普通の人』は、実はもっと多くの人に良い影響を与えられると思っています。イベントではそうした方々に光を当てるため、例えばローカルゲストには参加者と色の違うネームカードをつけてもらうなどで特別感を演出することも。徐々にローカルゲストも伝え方が上手くなったり、ファンが増えてきたりと、参加者ゲスト両方が一緒に成長していっていると感じます」と川人さん。ローカルキャリアカフェの開始当初からのキャッチコピーは、「道はある、迷うほどある」。丹波ではなく、キャリアを模索する者の立場に立った呼びかけである。内容も、「移住してください」と呼びかけるのではなく、幸福とは何かまで突き詰めて、キャリアを考える場に仕立てられている。
丹波からスタートしたローカルキャリアカフェは四国4県、鳥取県倉吉市、岩手県住田町などに提携地域を広げ、東京でのイベント開催も実現した。岩手から3名と丹波から1名のゲストスピーカーが参加したローカルキャリアカフェトーキョーも、やはり主眼は話者と参加者が語り合うセッション。地方と都会をつなぐ場として、復興関係者も関心を寄せた。こうした活動を知った各地の行政からの相談も増えているという。
今後のローカルキャリアカフェについて川人さんが語ってくれた。「各地で地域を盛り上げようとしている人たちを、前向きな人のプラットフォーム、地域活性の中間支援団体として応援することで、日本をもっと良くしていきたいです」。
「人」を活かす仕組みの整備
横田さんは、世界一周経験者でもあるローカルキャリアカフェ川人さんとのコラボ企画「世界一周おかえりビレッジ」という新しい取り組みをスタートした。世界一周旅行から日本へ戻ってきた若者に丹波に立ち寄ってもらい、これからの生き方を考える機会を提供する。滞在中はキャリアアドバイザーに無料で相談に乗ってもらうこともできる。丹波にとっては、訪問者が増えるだけでなく、世界を回ってきた視点で地域を再評価してもらえるという利点がある。旅行者からの評判も上々でショートステイ含め海外から帰国後に丹波を訪れる若者も少しずつ増えてきている。「丹波をキャリアのメッカにしたいんです。キャリアを考える人が集まってくる場所。2年で日本中、4年でアジア中、8年で世界中で、キャリアを考えるなら丹波へ行け、と言われるようにしたい」。
ローカルキャリアカフェや世界一周おかえりビレッジで丹波を訪れ、移住を考える。みんなの家によって移住に伴う住居の問題が解決されるとともに、地域に溶け込みやすくなる。丹波には「人」という資源を呼び込み、活かす仕組みがシームレスに存在している。
休日ともなると、前川さん、横田さんらの活動に呼応して集まった若者が、市内に複数あるシェアハウスのどこかに集まり、地域の活性化について語り合っている。「また書かなきゃいけない企画書が増えちゃったな」と笑いながら自分が住む町を幸福にするために動く「人」が、確実に増殖している。
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