[宮城県女川町]踊って伝える「ふるさと」町民参加のダンス動画を世界へ発信!

撮影は女川を象徴する各所で行われた

撮影は女川を象徴する各所で行われた

宮城県・女川町で、高校生が中心となったダンス動画撮影プロジェクトが始動した。

同町の高校生、山本瑞帆さんと木村朱里さんは、東北各地の中高生を対象としたプロジェクト学習「OECD東北スクール」に参加している。今年8月に東北の魅力を発信するイベントをパリで開催するにあたり、女川から伝えたいことは何だろうと考えた。町の20人以上に話を聞き、見えてきたテーマは「ふるさと」。津波で町の8割以上が被害を受け、目に見える景色がすっかり変わってしまった女川町。それでも変わらない人のつながりや温かさを、世界に伝えたい。熟議の末、町の人たちが「さんま DE サンバ」を踊る動画を撮ってパリで流し、会場を巻き込んで踊ろうと決めた。

「さんま DEサンバ」とは、1998年から続く「おながわ秋刀魚収獲祭」のテーマソング。第1回の開催に合わせ、水産加工会社の経営者だった佐藤充さんが作詞作曲し、小学校の児童の保護者が振り付けをした。以来、毎年の収獲祭や中学校の運動会などで踊り継がれてきた、須田善明町長曰く「女川のソウル」だ。津波で亡くなった佐藤さんと一緒に結成したバンドで活動する山田雅裕さんは「震災後に行われた収穫祭で、おとなしかった中学生たちが『さんま DE サンバ』をハジケて踊っているのを見て、本当にいいなぁと思った」と、町民の共通の記憶ともいえる歌とダンスの力を語る。

町の人を巻き込み、コミュニケーションの機会を創出

「ふるさと」についてのインタビューも世界へのメッセージになる

「ふるさと」についてのインタビューも世界へのメッセージになる

今回の撮影には、保育園児から町内企業の社員、ゆるキャラまで、町民約200人が参加予定だ。撮影ではダンスだけでなく、「あなたにとって『ふるさと』とは?」というインタビューを行い、その映像も記録。参加者が町や周囲の人への愛着を改めて口にする貴重な機会となっている。

撮影にあたり山本さんと木村さんは、できる限り事前に参加者を訪ね説明を行っている。企画の趣旨や想いを伝え巻き込むことで、参加者は小道具を準備したりダンスを練習したりと、主体的に撮影に関わってくれる効果があった。木村さんは「学校と両立しながらの活動は大変だけど、楽しいです。町外の人と出会えたこともだけど、それ以上に、町の人とたくさん話ができることが楽しい。厳しい指摘を受けることもあるけど、それも勉強だと思っています」という。

自らもキレのあるダンスを披露した須田町長は、「彼女たちが自分たちで行動を起こしてくれていることが力強く、そうした行動が町の皆さんの共感を得ているんです」と語った。町内で撮影を行っていると、耳慣れたメロディを聞きつけた人が集まり、自然と輪ができる。町民の思いがつまったダンス動画は、地域の魅力を世界に発信するだけでなく、町民の記憶をつなぎ、笑顔を生む役割も果たしている。

OECD東北スクールHP http://oecdtohokuschool.sub.jp/

文/畔柳理恵