立ったまま入る 松平公ゆかりの混浴岩風呂
阿武隈川の源流に「ノイローゼの若者が3日たったら笑い出す」という凄腕の秘湯があると聞いた。そんな話を聞いたら行かないわけにはいかない。白河から阿武隈川沿いに車を走らせ、くねくねとカーブする道を進み、本当にこの先に道があるのだろうか、と不安になりはじめた頃、やっと甲子温泉旅館大黒屋についた。白河藩主松平定信公も好んだといわれる旅館大黒屋の名物は川底の岩をくりぬいて作った大岩風呂。本館から大岩風呂へ続く階段はまるで地下坑道のよう。探検気分で階段を下り、川に架かる橋をわたる。湯小屋の扉を開けると、100人は入れるような大きな岩風呂があらわれた。大岩風呂は昔ながらの混浴で湯舟のすぐ横に脱衣カゴが並ぶ。目隠しは衝立一枚。ここで着替えるのは女性としてはかなりの勇気がいるけれど、ここはためらう気持ちをふりきって服を脱ぎ湯舟へドボン。深さ1・2メートルの湯舟に立ったままつかれば、やわらかい単純泉にゆらゆらと浮かんでいるよう。足元からはじわじわと源泉が湧き、プツプツと上る気泡に包まれて気持ちいい!ノイローゼでなくても、笑い出したくなるようなおおらかな湯だ。
湯小屋のすぐそばにはブナの森。夕暮れには山からハクビシンやテンが遊びにきた。もう、小さなことなんか忘れちゃおう。ここにいるとドーンと大きな気持ちになれる。(L)
お問い合わせ:0248-36-2301(旅館大黒屋)
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