【インタビュー】立場を越える。~被災自治体との協働~

(本稿はRCF復興支援チーム藤沢烈氏のインタビューです)

住民と企業と行政、そして住民間をつなぐ

―釜石市でコミュニティ支援を進めていますが、市はどんな状況ですか?

2011年に、復興計画はできあがっています。人がどこに住み、住宅とイオンがいつできて、何を残すのかは決まっているわけです。計画を改める段階ではありません。むしろ、高齢化、過疎化、産業基盤が弱いといった震災前からの問題をどうするか。たまたま被災地なだけで、日本の多くの地域が抱えるものと同じ課題に、釜石市は向き合い始めています。

釜石の応援隊ということで「釜援隊」と名づけて、私の団体RCF復興支援チーム(以下RCF)経由で7人現地に支援に入っています。この夏からさらに7人加わり、14人体制で釜石を支えることになります。彼らは地域を担当する人と、観光や水産業といったテーマを担当する人に分かれ、地域ごとの復興ビジョンづくりを支え、地域の課題に取り組んでいきます。

―まさに街づくりにがっつりと取り組むんですね。釜石でそういう体制が組めたのはなぜでしょうか?

釜石では嶋田さんという、大学時代の後輩が副市長を務めています。彼と個人的に繋がりがあったことから、支援がスタートしました。過去の震災から、コミュニティを戻していく取組が必要だとわかっていましたが、どの自治体も取り組む余裕がありませんでした。釜石でそうした取組を開始することを私は嶋田副市長に提案しました。認めてもらったことをきっかけとして、UBS証券さんにスポンサーについて頂く形で、釜石市の唐丹地域に三人のスタッフを送り込むことになります。何から始めるべきかもわかっていませんでしたが、行ったメンバーが上手に行政や住民の皆さんと接したことで、次第に信頼関係も生まれて来ました。

釜石にスタッフが駐在したなかでの一番の発見は、住民と行政(釜石市役所)の対立よりも、実は住民間の対立が課題だということでした。住民の中で意見を一致させられないと、行政として片方につくことができず、対応を進められません。2年すぎた今でも、計画が止まったままの地域もあります。RCFは、住民と住民、住民と行政の繋がりを強めていくことを頭に置きながら活動しています。行政から住民に何かを伝えるときに、RCFは動きます。

例えば市役所が住民に計画を伝えたいときは、RCFは事前に役所に話の内容を聞き、その足で住民のキーパーソンにもとに向かいます。そして、「明日市役所からこれこれの話があるので、関係ある方を呼んでおいて下さい」と伝えます。すると、翌日の行政と住民の対話の密度が濃くなるわけです。また、何か誤解が生じた際にはキーパーソンから説明してもらうようにすることで、住民間で問題が解決することになります。

地域社会のつながりが弱まっている

―住民間の対立というのは、街の未来に対する意見が根本的に食い違っていたということですか?それともコミュニケーション不足?前者だとすると、そこをまとめるのはすごく難しいのでは。

地域の中でコミュニケーションが不足していることが課題です。以前とくらべて、地域社会のつながりが弱くなっているのです。公営住宅がいつ完成するか、といった基本的な話でさえ、内容が違って伝わっていることがあります。住民のみなさんのもとに足繁く通っていると、そうしたことに気付かされます。僕らが緩衝材となり、なんとか改善できた事例がつみあがってきたから、「RCFがいてくれるといいね」という話になっています。ただ、あくまで釜石市のそれも一地域だけの話でした。どのように広げていくか。バージョンアップが課題ですね。