今年5月、宮城県女川町のきぼうのかね商店街に新たな注目スポットが誕生した。その名も「ガル屋beer」。「サーバーのタップ(注ぎ口)が10口もあるビールバーは、東北でも他にはないのでは」という本格的なビールバーだ。
店長の木村優佑さんは女川町出身。高校卒業後に上京しSE(システムエンジニア)などとして働いていたが、震災を機に、地元でできることはないかと考えるように。そんな中、ビールの醸造が一軒家ほどのスペースでできることを知り、「これなら女川でできる」と思い立った。飲食業は未経験だったが、醸造所を併設した東京の飲食店で1年間修業をし、2013年10月に女川にUターンして「復幸まちづくり女川合同会社」に入社。女川の食品の合同ブランド「あがいん女川」のインターネット販売などに携わる傍ら、ビールバーの運営をスタートした。「ビールの飲みやすさや幅広さ、いろんなビールがあるんだということを知ってもらいたい。そして地元の人が飲んで楽しんで、次の日の仕事を頑張ってもらえれば」という。
取材日のメニューに掲載されていたビールは夏季限定フルーツビール「パイナップルエール」、夏向きのクラフトビール「インディアンサマーセゾン」、岩手県盛岡市の地ビール「ベアレンクラシック」など。自らもビール好きの木村さんがセレクトした地ビールが中心で、季節や客の反応によって樽を入れ替えていくという。また、「あがいん女川」の情報発信拠点として、おつまみメニューの提供や通信販売の受付もしている。
来店客は地元住民が多いが、被災地を巡るバスツアーの客も。中には仙台からやってくるビール通もいるという。来年3月には新しい女川駅が開業し、石巻や仙台からも来店しやすくなる。「女川はいま、まちが出来上がっていっているところ。流れる時間はゆっくりだけどスピード感が早い。話しやすい人が多く、やりたいことをやらせてくれると感じています。ビールバーも、『挑戦してみな』と会社の事業としてやらせてくれました。」
現在は他地域で生産されたビールを提供しているが、目標である「女川でのビール醸造」をスタートするべく、目下、醸造所の土地を探しているところだ。今後、女川で地ビールを作り東京をはじめ全国のビールバーに卸すことで、女川の知名度を上げたいという。
文/畔柳理恵
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