2014年5月、福島県からの県外避難者数はピーク時の約7割の4万5千854人まで減少した。県内へ人が戻りつつある中、人口の定着を図ろうと、福島県は「福島県総合計画 ふくしま新生プラン」を掲げ、復興再生を目指している。今年度の予算は約1・7兆円。重点プロジェクトとして人口減少・高齢化対策や環境回復、生活再建支援など13を設定している。
子育て世代向けに児童預かり付きのコ・ワーキングスペースも登場
重点施策の中心となる人口減少 ・ 高齢化対策には「空き家 ・ふるさと復興支援事業」や「高齢者社会参加活動支援事業」などが並ぶ。なかでも特徴的なのが起業支援の「ハンサム起業家育成 ・ 支援事業」だ。「ハンサム起業家育成 ・ 支援事業」は起業相談会、実践起業塾、創業支援、子育て世代向けコ ・ ワーキングスペースで構成される。
女性 ・ 若者を対象に起業相談や起業塾を開催するほか、審査に通った起業希望者には必要経費の4/5以内、上限200万円を助成。必要なら専門家を派遣して事業継続や販路拡大の相談にもあたる。
女性が起業しようとするとき、家庭や育児との両立が一番の問題となる。そこで「子育て世代向けコ ・ ワーキングスペース」ではスペース内で利用者児童の一時預かりを行い、女性が安心して仕事に打ち込める環境を用意する。「何かをやりたいけれど、どうやっていいのかわからない」という人のためには、事業計画をブラッシュアップしたり、起業家同士や働き手となる短時間労働希望者とのマッチングをしたりするなど、きめ細かいフォローアップも行う。
県では2003年より福島駅西口の「コラッセふくしま」にインキュベートルーム(起業家育成スペース)をおき、県内で社会的課題の解決にとりくむ起業家を「ふくしまベンチャーアワード」で表彰するなどして積極的な起業支援を行ってきた。今回コ・ワーキングスペースを運営することとなった株式会社クリフ代表取締役の石山純恵さんもインキュベートルーム出身者であり、2013年の「ふくしまベンチャーアワード」でグロース部門金賞を受賞している。商工労働部産業創出課主事の土田かおりさんは「福島発起業家のロールモデルとなるような存在を、今後さらに一人でも多く生み出したい」と抱負を語る。
「風評の払拭」に向けた戦略的情報発信
そのほかに重点事業として掲げる「きずなづくり」においては、戦略的情報発信事業として約4億円の予算で情報発信を強化している。2013年からは「ふくしまから はじめよう」プロジェクトを始動。「福島発」「福島ならでは」の新たな取り組みを推進するとともに、民間団体などとの新たな連携や、SNS等を活用した発信を強化している。フェイスブックページの「いいね!」数は4万を越え、都道府県では全国一位。職員の顔が見える発信を行うなどの工夫に努めている。
「福島ならでは」の発信としては、「再生可能エネルギー先駆けの地」を目指し、福島空港メガソーラーや洋上ウィンドファーム実証研究事業など、再生可能エネルギーの研究開発にも力を入れている。また、2013年に全国のご当地キャラクターが一堂に会した「ご当地キャラこども夢フェスタ」などを開催。2014年にはアジア初上陸となるボランティアと音楽を融合したロックフェス「ロックコープス」にも参画し、「福島発」の取り組みにも力を入れている。
未だ課題も多く長い復興の道のりが続く福島県だが、こうした攻めの情報発信戦略が一つひとつ形になることで、新たなふくしまが創られていくことに期待したい。
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