総額60億円を拠出し2011年7月から開始されたキリングループによる「復興応援 キリン絆プロジェクト」が今年6月で3年の区切りを迎えた。半分以上の支出となる農業・水産業支援については、当初2015年3月までの取り組みを予定していたが、福島県においては1年延長する方針だ。
まちづくりにつながる協働テーマの産業支援
2013年からは、前年までの農業機械や養殖設備などハード中心の支援から切り替え「第2ステージ」として、ブランド育成や販路拡大、人材育成などのソフト支援を実施。農業、水産業それぞれ各地域で事業者グループを選定し、助成を行ってきた。
案件形成から助成決定にあたっては、地域の協働を強く意識。事業者同士の横のつながりに加え、行政との連携も必須要件とした。
「協働ってなんですか?という問いから始まります。強みをかけ算するのが協働。それぞれの強みを見つめ直しましょう、と」。そう話すのは、キリンビール株式会社CSV推進部の古賀朗さん。そしてその狙いをこう続ける。「特に三陸沿岸部の多くの地域では、水産業はまちづくりと直結します。行政も含めた地域の連携プロジェクトにすることで、単なる商品開発や事業の成長だけに留まらず、地域全体への波及効果が見込めるのです」。ビジネスと地域社会が一緒になった取り組みは、CSV(共有価値の創造)の好事例と言えるだろう。
福島の産業に何ができる?原点に立ち返り考える
今年度以降、計画を延長もして中心的に取り組むのは、福島の産業復興支援だ。「諦めずに挑戦している方々がいる中、まだ我々はやり切れていない。ゼロベースで何ができるかを検討している」と古賀さん。農業、水産業それぞれ約1億円の予算をあてる予定だ。
現在は県内各地を改めて訪問しながら、課題整理から行っている。古賀さんは、この3年間に岩手県や宮城県で実践してきた地域単位の支援とは異なる形も示唆する。「例えば情報発信。風評対策を考える前に、そもそも魅力を発信できていたのかという視点もある。また県全体として出荷が落ち込んでいる品目もある。地域単位にこだわらず、課題に応じて打ち手を検討している」。夏頃には支援方針を固める予定となっている。
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