平泉の荘園で入るのんびり田園の湯
奥州藤原氏の権勢を今に伝える平泉・中尊寺。その荘園として栄えた旧骨寺地区にある矢びつ温泉は、懐かしい農村風景の中に立つ一軒宿だ。東北新幹線の一関駅から車で30分の好立地で、ビジネスパックあり、無料送迎あり。東北に通う身にはありがたい宿ということで訪れた。
一関駅から車に乗り宿を目指すと、途中には奇岩が点在するエメラルドグリーンの厳美渓が見えてくる。ここでは寄り道して名物の郭公団子をお勧めしたい。東屋で木槌をコーンと鳴らすと川向うからロープをつたって団子が下りてくる。時代劇の1シーンで見たようなレトロ感を味わったら、いよいよ宿のある旧骨寺地区へ。田植えが終わったばかりのみずみずしい田園風景は、今も中世荘園時代と変わらない景観を残すという。
平成元年に温泉が湧いたこの地は、かつては歩いてしか行けない秘湯だった栗駒山麓の須川高原温泉へ湯治に行く人々が山に入る起点だった。宿についたら、さあ温泉へ。厳美渓に流れ込む磐井川の渓流を見下ろす露天風呂は、川もやに包まれて、夜空には天の川が見える。朝が来れば遠くには田んぼも見渡せる。弱酸性でなめらかな肌触りの湯につかり、旅の疲れを癒したら、土地の食べ物に元気をもらおう。黄金こめ豚やしょうが餅など、料理はどれも素朴だがしみじみおいしい。
「なーんもないとこです」と宿の人は言うけれど、こういう田舎が都会人には何より嬉しい。東北に行くならビジネスホテルではなく田舎の温泉でのーんびりしたい。そんな夢を叶えてくれる田園の秘湯だ。(L)
お問い合わせ:0191-39-2031
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