東の食の実行会議レポート② 行政パネル:石巻市×大船渡市×釜石市×事業再生機構

行政、企業、東北の食の事業者、NPOなど各界から100名を越える参加者が集結した「東の食の実行会議」。2つ目のレポートは、2日目に行われた行政パネルディスカッションから。

登壇者は、宮城県石巻市から亀田市長、岩手県釜石市から元副市長の嶋田氏、同県大船渡市から角田副市長、被災した事業者の再生を支援する事業者再生機構から池田代表取締役社長の4名。現役市町に加え、嶋田、角田両氏は中央官庁からの出向者で、池田氏は長く民間銀行を経営して来た「バンカー」という、地域やセクターを越える4者によるパネルのモデレーターは、RCF復興支援チームの藤沢烈氏がつとめた。(1回目のレポート「小泉進次郎氏×ローソン新浪剛史氏」はこちらから

産業復興に重要な外部企業との連携

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左からモデレーターのRCF藤沢市、事業再生機構池田氏、石巻市亀山市長、元釜石市副市長嶋田氏、大船渡市角田副市長

東北の食産業の現状認識の共有から、今後の行政のあるべき姿を議論したこのパネルディスカッション。大きな論点の1つ目は、地域産業の変革においていかに行政が外の企業と協業を実現するかという点となった。

角田大船渡市副市長は、「食産業の現場が、消費者のニーズにあったものになっていない」と自ら霞ヶ関から現地へ出向して感じてきた課題を話した。その上で、生産現場から口に入るまでのバリューチェーンとして、最後の消費者を意識したものに変えて行く必要性を指摘。漁協による共販売制度など既存の枠組みを踏まえながらも、生産量から付加価値をつけた質を追求するなど、「意識の転換」が重要と話した。その上で「そうした意識を持った事業者と共に、マーケティングリサーチなど付加価値をつける動きを外部企業と共に行っていきたい」と期待を述べた。

地域産業の発展へ向けての外部企業との連携の必要性については、亀山石巻市長、嶋田釜石元副市長も同調した。地域内外の連携を進める中での行政の役割について、両氏ともに「中と外のつなぎ役」であるし、その上で亀山氏は「スピード感を失わないためにも、部署間のいわゆる縦割りを取り払うことが最も重要」と話した。また2011年6月から2年間の釜石市在任中に、トヨタ自動車やKDDIとの協働プロジェクトや、NPOと連携し外部人材をまちづくりに活用する「釜援隊」などを実現してきた嶋田氏は、復興の「複雑さ」を指摘。「復興の取り組みは、住民の生活や福祉、産業、など複数の分野にまたがるものが多い」とし、役所の単独部署だけでは案件を受け切れないケースがある中、そこを調整する「行政内のコーディネート力」が重要と話した。

今までに約450の事業者の再生を支援してきた事業者再生機構の池田氏は資金面での支援の重要性を強調した。「地域の金融機関から先に事業者にお金がまわらないことが起きている。またボラティリティ(価格の変動幅)が高いということで、水産系の事業にはファンドからお金を出づらい」と現状の課題を指摘。140人の職員全員が1つひとつ事業者をまわり事業再生計画をつくっている事業再生機構から、現場のニーズとして円滑な資金流通の必要性を訴えた。

行政連携は窓口の把握を
亀山石巻市長「私がキーパーソン」

では具体的に行政はそのためにどのような役割を果たすべきか。嶋田氏はまず情報集約の価値を指摘。「釜石のように人口3.7万人程度の規模の町では、市役所に情報が集まってくる。どこでどのような事業者が何をやっているのか、そうしたリストが連携マッチングの基本となる」とした。その上で、都会と地域における言語や前提の違いを指摘。「外部企業として何ができるのか、何ができないのか、期間のしばりはどれくらいなのか、どの役割を担って欲しいのか、要望をストレートに示して欲しい」と話し、マッチングにおいて必要なコミュニケーションを説明した。

一方、外から行政に対して連携を提案するにあたっては、窓口が重要というコメントも。「釜石市役所は、官民連携の窓口たる部局に権限と実行力を持たせてきたことで、これまで企業との協働事業を円滑に進めてきた。これからもこうした体制は継続・強化されていく」と話した。それに対し、亀山氏は「石巻では私がキーパーソン」と外部連携へも強い意欲を見せた。来年のイタリアミラノ博への出典やふるさと納税のダイレクト決済対応、事業者と連携した販路開拓など、今までの行政の枠を超えて産業復興を押し進めていると話した。

また事業再生機構の池田氏は「お金や力を持っている世代と共に事業を進めることが結果につながる」と、連携を進めるにあたっての世代間の協働について言及。今回の「東の食の実行会議」のような連携の場も市町村単位で行うべきだとした。大船渡の角田氏も商工会等との連携の必要性に言及しながら、「トンガっている若手が潰されないよう地域全体で支えるしくみが必要」とし、亀山石巻市長も「石巻でまさにそうした連携の場を企画している」と賛同した。

3市すべてが外部連携に強い意欲を示す形となった本パネル。3市に限らず行政のオープン化がさらに進んでいくことが、産業復興をさらに推し進めるものになると期待したい。