伊達ルネッサンス塾 地域とつながり自分の軸を見つける“伊達流”の学びの場

 宮城県県南・沿岸部・福島県北部を中心に、広域連携をしながら地域人材を育成する「伊達ルネッサンス塾」がスタートした。
 塾を主催する「一般社団法人ふらっとーほく」は、震災後、宮城県亘理町、山元町、福島県新地町において、地域の“達人”の技能に触れ地域の担い手を育成するプログラム「まちフェス」などの活動を行ってきた。震災後3年間の活動を通して構築された広域のネットワークを活かし、地元の人たちに向けて新たな人のつながりを作る活動として今年「伊達ルネッサンス塾」をスタートした。

島根県雲南市のノウハウを伊達流にアレンジ

「伊達ルネッサンス塾」は地域に根差した学びの場。

「伊達ルネッサンス塾」は地域に根差した学びの場。

 理事の阿部結悟さんは山元町出身。震災から3年が経ち、「復興まちづくり、地域づくりの顔ぶれがいつもおなじ。「若者が必要」と誰もが言うけれど、地域で若手人材が育つ機会がない。」と感じていた。島根県雲南市で2011年から実施されている次世代人材育成事業「幸雲南塾」を参考にし、同事業をプロデュースする尾野寛明さんを塾長として迎えてノウハウを生かしつつ、伊達流にアレンジ。地域性も考慮して、あえて起業やビジネスプランを学ぶ塾に限定せず「半年かけて塾生が自分のやりたいことを言葉にし、ネットワークを作る場」を目指したという。

 塾は2014年5月から11月にかけて6回開講される。塾生は復興支援員、学習塾やヨガの講師、NPO職員など様々な職業を持つ20代から40代の9人。受講に先立ち、自身がこれからチャレンジしたい内容をまとめた「マイプラン」を作成し 提出したのに加え、各回の塾の前には課題が出され、「マイプラン」のブラッシュアップや、地域の人へのインタビューを行う。毎回の塾ではワークを行い、「マイプラン」に対する講師や塾生、聴講者からのフィードバックを受けながら、最終回に行われるプレゼンに向けて準備を進めていく。

 マイプランは事業に関するものでも自分自身に関する内容でも可、さらに、プランの実行を迫るのではなく、半年間かけて他者のフィードバックを受けながら自身の軸や将来の方向性を見出すことに重点を置いている。阿部さんは「入口が広く、出口も広い。幅広い人たちがネットワーク化され、広域に連携できるきっかけを作ることができるのが、伊達ルネッサンス塾の特徴」という。中学生の頃から地域のボランティア活動に関わり、現在は丸森町筆甫地区で復興支援員として活動している塾生の八巻眞由さんは、「ずっと地域づくりに関わってきたが、塾に参加し、回を重ねるごとに自分のやりたいことの軸が見えてきた。また、なぜそれをやるのか、どんな順序を踏んでやるのか、といった物事の考え方の練習ができていると感じる。一生活かせるスキルがついていると思う」という。

垣根の低い広域のネットワークが、新たな力を生む

塾生と協力者たちのネットワークが強みになる。

塾生と協力者たちのネットワークが強みになる。

 塾の会場は毎回変更され、塾生は半年間で1市4町を周ることになる。自分の住んでいる地域の近くでありながら訪れたことのなかった場所に足を運べると好評だ。また、それぞれの会場で地元の事業者や活動家に講演をしてもらうとともに、住民が運営協力や聴講という形で参加し、各地域に人のネットワークが広がるという効果も生まれている。

 伊達ルネッサンス塾がモデルとした「幸雲南塾」では、卒業生がNPOを立ち上げ、塾の運営を担い地域の人材育成に関わるという動きが生まれている。「伊達ルネッサンス塾も、塾生の中から運営に携わる人材が出てくれば嬉しい。まだ1期目だが、ここから何かが起こるというワクワク感がすごくある」と阿部さんは言う。八巻さんも「塾に参加したことで、新しい居場所ができたと感じる。今後1年2年…と活動を続けていく中で、塾生を中心とした広域のネットワークがきっと心の支えになるはず」と実感している。
提供する側と受ける側、それを見守る地域の人々……垣根の低い「学び合い」の場が、地域にエネルギーを生みつつある。