福島県では、「平成26年度 新生!ふくしまの恵み発信事業」の一環として、第1回メディアセミナー「福島県漁業復興の試金石「試験操業」― これまでの総括と今後の展望 ―」を、去る平成26年9月2日(火)に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催。新聞・雑誌記者、フリージャーナリスト、テレビ局の報道担当者など63名の関係者を集め、「試験操業」の成果や今後の展望、安全・安心への取組みなどについて、実際の担当者や漁業関係者にご登場いただき、紹介いたしました。
福島県では、原子力災害に伴う福島県産農林水産物の風評払拭を図るため「新生!ふくしまの恵み発信事業」を立ち上げ、『おいしいふくしま、できました。』をキャッチフレーズに、県産農林水産物に関する安全・安心への取組みとともに、ふくしまの豊かな自然と生産者のひたむきな想いが育む農林水産物の魅力やおいしさを、全国の消費者に向けて広く発信しています。本セミナーも、その趣旨に基づき行われたものです。
セミナー冒頭、主催者を代表して、福島県 農林水産部 農産物流通課 課長 金子 達也が、「福島県沖に広がる潮目の海、その恵みである海産物、それを守るための取組みである『試験操業』について、これまでの総括と、常磐もの復活へ向けた漁業関係者の生の声に耳を傾けていただきたい」と挨拶して会がスタートしました。
■多彩な魚介類に恵まれ、様々な漁業が発達
最初のプログラムでは「福島県漁業の特徴」と題して、県水産課 主任主査 吉田 哲也から、福島の海では親潮と黒潮が出会い、豊かな漁場が形成されていること、そこで育まれる魚介類は「常磐もの」として高い評価を得てきたことが紹介されました。また、多彩な魚介類に合わせて、底びき網漁業や船びき網漁業、さし網漁業など、様々な漁業が発達し、根付いてきたことも報告されました。
さらに、福島の漁業は、相馬双葉地区といわき地区に大きく分かれ、それぞれ特色ある漁業が発展してきたことなども解説されました。
■2万回を超える検査で安全性を確認
次のプログラムでは、県水産試験場 漁場 環境部長 藤田 恒雄が「放射性物質の影響」について講演し、平成23年4月から26年8月にかけて、計178種の魚介類について延べ2万検体を超える放射性物質の検査を行い、安全性を確認しているという報告がありました。
今なお、ヒラメやイシガレイ、ババガレイ、マコガレイなどのカレイ類といった常磐ものを代表する魚種も含め、36種類の魚介類が国の出荷制限などの指示(平成26年9月2日現在)を受けていますが、一方で、イカやタコ類、エビ・カニ類、貝類やナマコ類を始め、世代交代が早いコウナゴやシラス、深い所に生息するキチジやアオメエソ(メヒカリ)などでは、速やかに放射性物質の濃度が低下したことも報告されました。
現在、魚介類の汚染は着実に収束に向かい、今後は、本格的操業の再開へ向けて、科学的根拠に基づく風評対策を行っていくことが重要ということが強調されました。
■「試験操業」のビデオを上映
セミナーでは、「試験操業」のビデオが上映され、今年の8月26日にいわき地区でも震災後初めて再開されたシラス漁の水揚げの様子や、「試験操業」にかける漁業関係者の声などが紹介されました。
■これまでの総括と今後の展望を発表
引き続き、福島県漁業協同組合連合会 常務理事 中田 研二 氏から「試験操業とは」と題して、これまでの総括と今後の展望について発表がありました。そもそも「試験操業」とは、モニタリング検査によって安全性が確認された魚種の中から対象種を決めて、小規模な操業と販売を試験的に実施することをいいます。平成24年6月に相馬双葉地区で始まった「試験操業」は、その後、いわき地区でも開始され、対象種や対象海域を着実に拡大してきたことが紹介され、今後は、出荷対象種の拡大、風評対策、本操業へ向けた検査体制の整備などが、より一層重要になってくると報告されました。
漁業関係者が語る、「試験操業」そして漁業復興にかける思い
さらにセミナー後半では、相馬双葉地区といわき地区それぞれから漁業関係者が登場し、それぞれに「試験操業」や漁業復興にかける思いについて語りました。
<過去を振り返らず前を向き ― 相馬双葉地区漁協関係者>
県沿岸北部に位置する相馬双葉地区の漁業関係者として、相馬双葉漁業協同組合 本所部長 遠藤 和則 氏は、「この地区は後継者にも恵まれとても活気づいています。震災前を振り返り当時の良さを取り戻したいという考えはなく、いまできることをここから新しい気持ちで前を向き、やっていくことが重要」とスピーチしました。
続いて同漁協 代表理事組合長 佐藤 弘行 氏は、「この地区で震災前に日本有数の水揚げ量を誇っていた底びき網漁業の本格的な再開へ向けて頑張りたい」と語り、相馬原釜支所女性部の佐藤 美恵さんは、「これまで幾度も苦難を乗り越えてきた相馬の漁業は必ず復活する。復活したら、漁港で漁師のおかみさん食堂をやりたい」と語りました。
<気を引き締め「試験操業」に臨む ― いわき地区漁協関係者>
一方、県沿岸南部、いわき地区のいわき市漁業協同組合 専務・信用担当理事 吉田 和則 氏は、「試験操業は、魚を獲るだけでなく、それを流通させることで、お客様の反応もわかりますし、安全・安心のアピールができる重要な機会。気を引き締めて臨んでいる」とスピーチしました。続いて同漁協 代表理事組合長 矢吹 正一 氏は、「いわきにはいわきの漁業者の誇りがある。諸先輩方が築いてきた常磐ものの金看板を取り戻し、後継者に残していきたい」と語り、いわき地区機船船曳網連絡協議会 会長 臼井 紀夫 氏は、「海の水がしょっぱいうちは食いっぱぐれがないので頑張れと諸先輩方からたたき込まれてきた。『試験操業』が始まり浜は活気づいている」と語りました。
<抜群の常磐ものを毎日持って来て欲しい― 築地市場関係者メッセージ(ビデオレター上映)>
最後に、築地市場で長年、福島県の海産物を扱ってきた東都水産株式会社 鮮魚部 副部長 石原 隆之 氏のメッセージがビデオレターで紹介されました。その中で石原副部長は、「常磐ものの評価は抜群で、味や鮮度にこだわるプロ好みのもの。毎日、市場にもってきて欲しい」と語りかけました。