東北復興新聞はこのほどフランス語版を発行し、フランスのボルドー地方で開催されたメドックマラソンの会場において配布された。
マラソン大会前日の9月12日、EXPO会場(ランナーのゼッケン受取り会場)に出展されたブースを訪れたランナーに手渡され、5時間で1,000部の配布が完了する盛況ぶりだった。フランスでは、震災と原発事故の直後はその被害の様子が大々的に報道されたものの、その後の復興に関する情報はほとんど伝わっていない状態だといい、新聞を手にしたランナーたちはフランス語で書かれた記事を食い入るように読んだり、「東京マラソンに参加したことがあるが、東北は東京からどれくらいで行けるのか」とスタッフに質問していた。
30年続く名物マラソン大会 世界中から3万人が来訪
メドックマラソンは、赤ワインで有名なボルドーのメドック地区でブドウの収穫直前の9月に毎年開催されるフルマラソン大会。コースは地区内に広がるブドウ畑とシャトー(ワイン醸造所)を巡るように設計され、給水所はシャトーの中。そこでは水だけでなくワインが提供され、さらにワインに合うビーフステーキや生牡蠣、ボルドー発祥の菓子カヌレなどが給食として出される、この地域ならではのご当地マラソンだ。
第30回の記念大会となった今年は、世界中から1万人のランナーが参加した。フランス全土だけでなく、ドイツ、スペインなどヨーロッパ各国、中国、香港、台湾などアジアからも参加者が集まっており、日本からも毎年約500人のランナーが参加している。同伴者や観光客も含めると3万人が訪れる、地域の観光産業を支える一大イベントだ。その経済効果は2,000〜3,000万ユーロ(25〜40億円)とも言われている。
食と並ぶ、メドックマラソンのもう一つの特徴が仮装だ。ランナーは、テーマに基づいて衣装を用意し、仮装してレースに臨む。今年のテーマは「世界の国とその祭」。「本当にその格好でマラソンを走れるのか!?」と思うほど凝った衣装を身に着けた人がたくさんいた。ランナーの仮装を地元住民たちは楽しみにしているようで、スタート、ゴール地点には見物客が鈴なりになっていた。また、コースとなっている道路脇の民家では、住民が庭でホームパーティーを開きながらランナーを応援していた。
大会を支えるボランティアは約3,000人。給水所で出される大量のワインは、各シャトーが無償で提供しているという。また、公式の給水所以外にも自らワインを用意して振る舞う「勝手エイドステーション」を設置している住民もいた。
ランナーは年に1度のご馳走マラソンを、地元事業者や住民は年に1度のランナーの来訪を心待ちにしている。「訪れる者だけでなく、受け入れる者も心から楽しむ」。ここに、観光振興のヒントがあるのかもしれない。
東北復興新聞フランス語版(PDF)はこちらから → 表面 裏面
Tweet