民間からの臨時職員だからこそ、できることがある[日本財団 WORK FOR 東北]

「WORK FOR 東北」は、被災地の自治体等への民間企業による社員派遣、個人による就業を支援し、人材の面から復興を後押しするプロジェクトです。
復興の現場に社員を派遣している企業、および、赴任した方々のインタビューを紹介します。

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Q:どのような経緯で浪江町役場に着任されたのでしょうか。
A:私の出身は、浪江町の隣の川俣町です。東京に出て20年間、建設コンサルタントでダムの調査・設計と学習塾で教室運営などの仕事をしてきました。東京で震災に遭ったとき、復興支援をするなら地元に戻って活動したいという気持ちが強くなりました。そんな中、ETIC.「みちのく仕事」で浪江町の復興支援コーディネーターの仕事を見つけ、自分のキャリアが役立つと思い応募しました。

Q:浪江町役場ではどのような業務を担当されていますか。
A:津波で大きな被害を受けた地域の集団移転に向けて、役場内の意見調整や、判断に迷う場面で職員の方のサポートをしています。コンサルティングの経験を生かして、移転計画を委託しているコンサルティング会社と調整したり、役場の一員として国などの関係機関と話し合ったりもします。
仕事で大事にしているのは、現場の情報を集めて、見える形にまとめて話し合うことですね。例えば、集団移転地として適した場所を専門的な目で選んだり、工程表を作ったりして、これからどう動くか調整しています。今回のような誰も経験していない仕事は皆で考えながら進める必要があるので、対話の機会が多くなるよう意識しています。

Q:民間出身者ならではの仕事をやれる環境はありますか。
A:確実にありますし、現場で作っていけるものだと思います。自分に求められることにギャップを感じても、対話を重ね、能動的に動くことで、活躍の場は見つけられると思います。
私の役割は復興支援専門員で、臨時職員の扱いです。職員のようで職員ではない、ある意味中途半端な立場にも見えがちですが、この立場にいることが今は重要かつ必要であると感じています。職員になりきらずに民間の目で仕事に向き合える一方、対外的には役場職員として発言しています。

Q:東北での生活はいかがですか。
A:隣町に両親が住んでいるので、実家に戻った感覚です。勤務時間は午前8時30分~午後5時15分で、残業はあまりありません。休日は地元や他地域のNPO関係者などとコミュニケーションをとったり、仲間とキャンプに行ったりという生活です。
元々浪江町役場のあった地区が避難指示解除準備区域になり、宿泊はできませんが活動はできるようになったため、所属するふるさと再生課が、避難先の二本松から役場の建物に戻りました。まだ水も飲めずインフラも整っていない状況ですが、南相馬市の宿舎から毎日通っています。

Q:今後のキャリアについて教えてください。
A:今後のことはあまり考えていません。今を生きることを大切にしたいと思っています。目先の抱負は、役場の組織をよりよくしたい、未来につなぐふるさと再生をしたいと思っている仲間とともに、役場・町づくりをしていくことですね。
将来的には、浪江町は第1次産業が戻ってこないと復興とは言えないと思っています。100年先につなげるまちづくりに貢献できればと思っています。

Q:これから被災地で働こうという方にメッセージをお願いします。
A:私が支援する上で大切にしているのは、まず聴くこと、現状を受け止めること、対話する機会を増やすこと、ゆるしの心を持つことなどです。そして、私たちの役割は自立支援であり、支援の内容は変化していくものであるということです。これから働こうとする人にもこんなことを大切にしてもらいたいし、なぜ被災地で働きたいのかを自分に問うことが、被災地で働いていく原点になると思います。
私には現場での直接支援にこだわりがありました。何らかのこだわり、根っこがあるなら、多少の不安があっても飛び込んで欲しいと思います。

(2013年10月26日取材)

記事提供:日本財団「WORK FOR 東北」