被災地の自治体などへ民間出身人材を派遣する「WORK FOR東北」が、東北の復興の現場で働く人材向けに研修会を実施した。
研修には、民間企業出身で東北3県の自治体の役場職員や復興支援員として働く21人が参加。冒頭に、山古志村長として中越地震からの復興の陣頭指揮を執った経験を持つ長島忠美副大臣が挨拶。「災害に対しては特効薬も正解もありません。その地域にとっての最善は何かということを、地域の人とコミュニケーションを取りながら考えていただきたい。ゴールは地域が自立すること。山古志村では震災以降、地域内外とのコミュニケーションのおかげか自殺者がゼロになりました。皆さんのノウハウ、人脈によって地域が開かれ、100年200年先を見ることができるようになってほしい」と語りかけた。
第二部では、中越地震直後に「ヨソモノ」として山古志村にボランティアに入り、現在は中越防災安全推進機構復興デザインセンター長を務める稲垣文彦さんが、“復興支援における成果”について講演。「皆さんの仕事は、GDPや人口を軸とした従来のものの見方では成果が見えにくいかもしれない。しかし、これからの社会の見方では、成果が見えるようになります」と、いわば“ヨソモノの後輩”たちを激励した。
地域づくりは足し算から始まる、と稲垣さんは言う。外部とのつながり、小さな成功体験、地域の中での共通体験を積み重ねることで、住民の中に主体性や共通意識が生まれる。逆に、それらがない状態でビジネスモデルや仕組みを導入しても、うまく機能しない。“足し算”によって地域力がマイナスからプラスに転じた後で“掛け算”の事業、すなわち地域の持続可能性に向けたビジネスモデルや仕組みを入れると、地域の力は飛躍的に伸びる。
稲垣さんは言う。「“足し算”によって地域力がプラス転じるには数年かかり成果も見えにくいため、従来は予算がつきにくかった。“足し算”に予算がついたのが、復興支援員や地域おこし協力隊の制度です。被災地は、いわば世の中の最先端です。皆さんは、これからの社会のものの見方の中で仕事をしている。皆さんの力で世の中を変えてください」。
第三部では、参加者が観光、広報・PR、コミュニティ支援など、携わる業務の内容ごとに5つのグループに分かれ、これまでの成果と、その成果を地域にどう残していくかをテーマにワークショップを実施。参加者からは「地域と外部とのつながりを作ることができたのは自分が外部人材として入ったことの成果」「いまは自分たちがサポートしているが、いずれ地域が自立し、勝手に回っていくような仕組みを作りたい」といった声があがった。
ソフト面の復興は成果が数値で表しにくいだけに、携わる人にとっては「これでよいのだろうか」「自分の価値は何なのか」と悩むことも多いだろう。長島副大臣と稲垣さんの言葉は、今後活動を続ける上で大きな指針となったのではないだろうか。
また、こうした研修等での交流により促進される地域間のネットワーク、ノウハウ共有は、地域にとって貴重な資源となっている。東北内だけでなく中越との交流が生まれたことにより、より活発なコミュニケーションが生まれ、復興を後押しすることを期待したい。
文/畔柳理恵
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