公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(以下、CFC)と三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、被災地の子どもの教育に 実施し、結果を公表した。
CFCは、家庭の所得格差が子どもの教育機会の格差につながることを防ぐため、被災地と関西地区の経済的困難を抱える子どもに対して、塾や習い事など使用できるバウチャー(クーポン券)を発行し、教育サービスを受ける機会を提供する活動を全国で行っている。
今回、バウチャーへの応募者や公益財団法人東日本大震災復興支援財団の奨学金受給者を対象に調査を行い、中学生・高校生1,987人と小学生~高校生の保護者2,338人の回答を得た。
調査報告会では、分析を担当した三菱UFJリサーチ&コンサルティングの喜多下悠貴研究員から、震災前後で父親の就業割合が9.4ポイント減少していること、震災後に世帯収入が減少しており、特に、世帯収入250万円未満の低所得家庭が8.3ポイント増加している(28.4%→36.7%)ことなどが報告された。また、相対的貧困層(※1)の家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもと比べて、「放課後に宿題以外の学習を全くしない」と答えた率が7.9ポイント高いなど、家庭環境が学習行動に影響していることがうかがわれた。
さらに、「将来どの学校まで行きたいと思いますか」という問いに高等教育機関(高等専門学校・短期大学・大学・大学院)を挙げた割合は80.4%であるのに対し、「現実的にはどの学校まで行くことになると思いますか」という問いに高等教育機関を挙げたのは68.4%、そして理想よりも現実を低く見積もる理由として43.3%が「家庭に経済的余裕がないから」と回答。子どもが描く自身の将来像に家庭の経済状況が影響することが示唆され、家庭の経済状況の格差が希望の格差につながりかねない状況が懸念される。(図1)
CFCの今井悠介代表理事は、自らの接してきた被災家族の状況と今回の調査結果を踏まえて、「4年で前に進んだ家庭とそうでない家庭との格差が生じている。このことは、子どもの精神面にダメージを与え『なんで、僕だけ?』から『どうせ、僕なんか』という自尊心の格差につながりかねない」と、4年目を迎える現在の課題を挙げた。そのうえで、次の5年間に必要な被災地の教育支援として「非日常よりも日常の教育に注力すること」「損失補償ではなく、困窮者支援」「社会保障のモデルづくりに資源を投入」の3つに注力したいという。
CFCでは、経済的困難にある子どもにバウチャーを提供するだけでなく、研修を受けた大学生ボランティアが電話や面談を行い個別相談に乗る見守り活動も同時に行っている。今井氏は、企業、個人に対して支援を呼びかけるとともに、「支援をしたNPOに対しては成果を求めてください。成果というのは人数ではなく『子どもたちがどう変わったか』です」と、定量化が難しい活動の成果への理解を求めた。
文/畔柳理恵
※1手取りの世帯所得(収入−税/社会保険料+年金等の社会保障給付を世帯人数で調整した値が、中央値50%以下しかない層を指す。
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