GLIDE
「GLIDE」は、仙台市一番町に2014年11月末にオープンした“仙台初”の国産エレキギター、ベース専門店。国産メーカーにこだわり、初心者から上級者用まで、幅広い商品を取りそろえています。宮城県女川町にギター製造工場の建設も準備中で、女川で作られたギターの直営販売拠点としての役割を担う予定です。
女川産ギターの販路確保のため
店内に入ると、その楽器店のようではないディスプレイに驚かされます。それはまるで、アパレルのセレクトショップともいうべき雰囲気で、壁面の什器には、洋服ではなくギターが並べられています。ギターは全て国産にこだわっています。
「もともと、お店を持ちたいと思っていたわけではなく、必要なものとしてオープンさせたのがこのお店なんです。」と話してくれたのは株式会社セッショナブル代表取締役でもあり、GLIDEストアマネージャーの梶屋陽介さん。
現在、梶屋さんは、宮城県女川町に県内の木材の使ったギター製造工場建設の準備をしています。
その女川工場でつくられた製品をすぐに販売するための販路チャネルとしての直営店が必要であり、販売に早くつなげるためにも、それまでに直営店を先行オープンさせ認知度をあげておく必要があると、梶屋さんは考えたといいます。
そんな女川産ギターの直営店としての側面ももつ「GLIDE」という名前は、“Guitar Life Design”の頭文字。
「バンドをやっている人たちばかりではなく、もっと日常的に生活を豊かにするアイテムとしてギターを提案できれば」という梶屋さんの思いが込められています。
ウクレレから始まった支援
梶屋さんは鹿児島県種子島の出身で、東京の大学への入学のため上京し、卒業後もそのまま東京の有名楽器店で働いていました。
東日本大震災時、東京の御茶ノ水で勤務していた梶屋さんは、被災地に何か支援が出来ないかと仙台のあるNPOに相談をします。その時、津波で楽器を流された人が多くいることを知ったそうです。そこで、何か楽器の提供が出来ればと思っていたところ、最近では小学校や幼稚園でもウクレレを取り入れているという話から、ウクレレを集め送る活動をはじめます。これが、梶屋さんの東北への支援のはじまりでした。
このことをきっかけに、楽器店で働いていたことを活かし、被災地で行われる多くのイベント支援活動に携わりました。
たとえば、2012年の「DANCE@LIVE」。「DANCE@LIVE」はプロアマ問わずに参加することができ、その決勝は毎年国技館で大々的に行われているという有名ダンスイベント。梶屋さんは、支援活動で東北を廻るうちに、東北にはダンサーが多く、頑張っている若い人たちが多いことに気づきます。しかしながら、あまり外からの刺激を受けて成長するという機会が少ない彼らに、大きな大会を経験することによって、地元に戻ってダンスシーンの活性化を担って欲しいと思うようになります。そこで、本来東北の予選会が行われるはずの無かった、岩手県宮古市で特別予選会を行い、優勝者を東京へ連れて行くことを企画しました。
音楽を通して元気になっていく人たちを目の当たりにして、これからも継続的に東北に関わっていきたいという思いが強くなった梶屋さんは、「東北で起業」をすることを決めたのでした。
宮城県女川町にギター製造工場を
ギター生産での雇用創出を考えるなかで、「沿岸部での持続可能な事業にしたい」という思いがあった梶屋さん。
「ギター生産、そして音楽となれば地域の活性化にもなるのではないかという思いは(起業を決めたときから)あって、ギター工場を作る気満々だったんですけど、地域の方の気持ちが大切なので、受け入れていただけるところがあるのか心配でしたね。」
そんなときに、知人から紹介してもらったのが宮城県の女川町でした。
「(女川の人達に)ギター工場を作りたいといった時の反応は、“おおおおお!いいね、いいね。ぜひ、やりましょう”という反応でした。」
「まずみなさんがやってみようと前向きに受け入れてくれ、意気投合したことで、迷わず女川町に決めました。」
と梶屋さんはそのときのことを振り返ります。
「海外でのギター工場だと、たくさんのおばちゃんたちが製造過程で働いているんですよ、ギターづくりは何も職人だけの職場ではないんです。女川の工場でも地元のおばちゃんの雇用の場になれば嬉しいです。」
また、現在、国産メーカーのギターには、ほとんどが輸入品の木材が使われていますが、女川の工場で作るギターは、できるだけ女川やその近辺の宮城県内産の木材を使いたいと考えているそうです。
「南三陸の杉の色は、少し赤くて独特なので、見栄えとしても面白いと思いますよ。」
「杉やひのきを使いたいと思っていますが、何せ前例がないので、音のデータが無いのでやってみないとわからないんですよ。」と、梶屋さん。
将来的には、海外、特にアジア圏への販売も視野に入れており、その時には、漆を塗装に使うなど、日本らしさ満載の、品質の高いギターを販売できればと、わくわくするヴィジョンを語ってくださいました。
観光資源としてのギター工場
「女川町長とも話しているのですが、ギター工場を観光資源に出来たらとも考えているんです。」
「ギターの製作体験とか面白いかなと思っています。」
ギター製作体験の詳細については未定ですが、週末を利用した日帰り製作体験や、泊りがけでの製作体験を企画することによって、参加者が女川で食事や宿泊をしてくれることにつながればと、梶屋さんはいいます。
小牛田駅と女川駅を結ぶ、JR石巻線もいよいよ2015年3月21日に全線復旧するため、女川にも足を運びやすくなります。
工場の完成予定は2015年10~11月頃、稼働は12月くらいからを予定しています。工場の予定地は、女川駅からわずか150m。この距離から、女川町のこの事業にかける期待がひしひしと伝わります。
ギター工場の完成、そして、宮城県内産の木材を使ったギターの完成が、今からとても楽しみです。近い将来、「ギターの町 女川」として多くの人が訪れ、町中に音楽が溢れ、そこに住んでいる人の生活を豊かにすることでしょう。
GLIDE
住所: 仙台市青葉区一番町2-7-3 ベアービル2F
電話: 022-393-4540
記事提供:NTTdocomo「笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト」
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