フランスのルーブル美術館は、東北3県で巡回展「ルーブル美術館からのメッセージ:出会い」を開催する。「被災地との連帯の気持ちを伝えたい」とルーブル側が企画し、3県の美術館との共催が実現。紀元前から18世紀までの彫刻、絵画など24点を展示する予定だ。会場の美術館も、それぞれの収蔵品なども加えて展示を行う。巡回展の監修者であるルーブル美術館のジャン―リュック・マルティネズ氏は言う。「芸術や芸術に触れるのは、困難な時期において、余分なことではなく、むしろ、かつてなく必要とされることなのです」。
震災は東北の芸術・文化にも甚大な被害を与えた。3県で被災した文化財は文化財保護法で指定されているものだけでも233件にのぼる(1月26日現在、文部科学省発表)。福島県の避難指定区域や津波被害の大きい沿岸部にある美術館・博物館では、現状の把握さえできていないところもある。
このような状況の中、文化財の復旧・復興の動きも官民から出てきている。文化庁は昨年4月に「文化財レスキュー事業」を開始。全国の都道府県の教育委員会や文化財・美術関係団体の協力を得て文化財の保全、復元などに努めている。
全国美術館会議は、昨年10月に「東日本大震災復興チャリティ・オークション 今日の美術展」を開催。400人の作家から無償で提供された作品や図録の収益金約1億3千万円を、被災地域の美術館の復旧や普及活動の支援にあてる。
文化財保護・芸術研究助成財団は、米国のワールド・モニュメント財団と連携したキャンペーンを開始。国内外の企業や個人に、文化財の救援と復旧のための支援を呼びかけている。
芸術や文化は、空腹を満たしたり寒さを凌ぐ助けにはならない。だが、人間の尊厳や先祖の歩んできた道を示してくれる。それらは地域の誇り、生きる力となるはずだ。世界的な知名度を持つルーブル美術館の巡回展をきっかけに、こうした芸術・文化の意義が見直され、東北の文化的復興に弾みがつくことを期待したい。
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