人々が放射能汚染による食の安全に不安を抱き、より厳しい基準を求めるなか、新基準はそれらの声に応えたものといえるだろう。現に、厚労省が国民から募った意見でも、基準を「厳しくすべき」という声が約8割あったという。
いまでも、福島の多くの人々はスーパーに並ぶ野菜などを、悩みつつ手に取っている。市場に出回る食品は一応基準値を下回るものと知っていても、実際にどのぐらいの数値なのか、そもそも基準自体が信頼できるのかという疑念があるからだ。
このような食と健康の問題に、市民の側からいち早く行動を起こしてきたのが、「市民放射能測定所」だ。
福島市民有志が昨年5月、フランスの環境保護NGOクリラッドの協力のもとに、食品の自主検査を行なったことをきっかけに設立。
「当初驚いたのは、地元産のシイタケから9000ベクレルという非常に高い数値が出てきたこと。これは自分たちできちんとチェックできる場所をつくらなければいけない、と。また国は500ベクレル以下なら安全と言っているけれど、個々の食品の数値がいくつなのかは答えられない。これも市民で測定所を立ち上げた理由です」と広報担当の阿部宣幸さん。昨年7月に市民団体の事務所の一角を借りてオープン、10月には独自に測定所を設けた。一時期は、申し込みの電話・ファクス・メールが殺到、対応しきれずにやむを得ず電話線を抜いたほどだという。いかに多くの人々が正確な情報を知りたがっているかがうかがえるエピソードだ。
市民放射能測定所は、現在、福島県内に10か所を数え、さらに県外にも数ヶ所設立の動きが広がっている。地域を超えた食品汚染が懸念されるなか、市民が自分たちを守るための情報を持つことはますます重要になってくるだろう。
(取材・文/ふくしま連携復興センター・遠藤 惠)
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