情報は社会インフラとまで言われる中、今回の震災でICTはどのように活用されたのか。3月9日に開催された「復興とICT」カンファレンスでは、行政、企業、大学、NPOそれぞれから識者が登壇し、震災復興においてICTの果たした役割について議論が行われた。
行政サービスを支えたICT技術
災害時、公共のウェブサイトには、情報を求めて通常の10倍以上のアクセスが集中するという。安心や安全のために必要な情報に、市民が常にアクセスできる状態であることが重要であるが、急増するサーバー負荷への対応は行政だけでも難しい部分が多い。民間企業からの支援を受けることで、行政機能を提供し続けられた例が報告された。一つは放射線モニタリングのサイト。原発事故の直後は情報が少ないこともあり「東京にいても危ない?」「そもそも日本が危ない?」といった不安を持つ人が多く、文科省は民間が冷静に判断できるように放射線モニタリングの情報を適切に発信する必要があった。これを文科省のサーバーだけで対応していたらサーバーダウンしてしまう恐れが強く、ヤフーやNTTレゾナントなどによるミラーサイト構築などの支援を受けた結果、情報を定期的に発信し続けることができた。また、放射線数値が生データのままでは市民に伝わりづらいため、マイクロソフトがそのデータをグラフ化するなどの視覚化の支援を、24時間体制で行った。
また、行政から発表される支援情報を統合したWEBサイト「復旧・復興支援制度データベース」は、APIを公開している。これにより外部サイトやスマートフォンアプリなど、多彩なチャネルから情報検索できるようになった。行政の有益な情報の再利用と拡散が進んだ好事例と言える。
業種を超えた支援者間の情報共有を
ICTは、被災者ケアの分野でも活用が期待されている。資金面での将来への不安や人間関係のストレス、健康や介護の問題など、被災者をとりまく環境は複雑だ。こうした中、医療と福祉と行政などの他職種が連携した総合的な支援が求められる。しかし、そういった個人に関係する情報は、それぞれの支援先が独自に持っていて共有されていないのが現状だ。そこをクラウドなどのICT技術を活用して共有化することによって、業種や業態を超えて連携できる仕組みを作ろうという動きも、行政とマイクロソフトによって行われている。こうした仕組みにより、支援の一極集中などのムラを防ぎ、必要な人にまんべんなく支援の手が渡ることも期待される。
これからの公共は、官のみの仕事ではなく、企業、大学、NPOなどのそれぞれ機能する自律分散型でありながら、協力しあう体制が必要となる。分散した主体同士を有機的につなぐ役割を担うことがICTには期待されるだろう。
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