「せっかく一度は助かった命を失わせてはならない」「適切な支援機関につなぎ、被災者を孤立させない仕組みを整えたい」これが事業スタートにあたる決意だ。
24時間通話無料で“被災地の悩み、お答えします”
対象となるのは、「社会的排除」にさらされている人々。 センターでは、社会的排除をめぐるテーマとして、生活・仕事・お金・心・病気・教育など19の領域に分け、電話相談から直接的な自立サポートまで、幅広い支援に取り組む。具体的なサポート内容は、①24時間の無料電話相談 ②全国の地域支援資源リスト作成 ③問題解決のための専門職によるサポート体制の確立 の3点だ。
岩手県で待望の 遠野センターが稼働
よりそい支援の体制が弱いとされていた岩手県においては、関係者間で昨夏より同サービスの提供について議論が交わされてきた。本事業の地域センター公募後、盛岡市に加え後方支援の拠点である遠野市でも稼働、被災地からのSOSに応える。舵をとるのは、大関輝一氏、NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」で社会的弱者・ホームレスの自立支援に携わり、今回の震災では大船渡モデルとして注目を集めた大船渡支援調整会議(アクション・ネットワーク)を主催する人物だ。大関氏は、現在の被災地が抱える課題として、復興格差の拡大を懸念する。混乱期を脱し被災地を取り巻く環境が安定してくる中で、生活再建の準備ができた人から仮設住宅を去っていくが、一方で取り残される人も出てくる。彼らをどう支えていくのか、それが被災地の喫緊の課題であると。「日本社会は、例えば仕事が見つからなかったり、生活に困窮してしまうと、本当の原因を探らずに、『その人が悪い』と当人に原因を求める自己責任論が強い社会です。しかし長引く不況と大震災によって多くの人が仕事や生活の基盤を失い、いまだに多くの人が生活再建できずにいる厳しい現実は、日本の福祉制度や被災者支援施策が機能しないことと、人々を支える支援ノウハウの蓄積や経験豊かな支援者が圧倒的に足りないという、日本社会の脆弱さを露呈しました。今求められているのは、さまざまな課題を抱えて、悩み苦しんでいる人によりそい、一緒に悩んでくれる人、そして彼らを支えるしくみです」と大関氏は指摘する。今回のホットライン事業は、そうした社会状況を背景に、「抱え込まずに頼ること」の大切さを意識させる。個人の努力では解決できない問題が社会には存在するが、そうした問題を抱えた人への受け皿が必要とされているのだ。「被災地の人々と協力・連携し、ネットワークをつくり、自立再建が難しい人も相談できる支援体制をつくること。そして支援を必要とする人によりそえる人材を育成していくことがセンターの目標です」。被災地の課題の解決に向け、大関氏の思いは熱い。
被災から一年。さまざまな状況が目まぐるしく変化する中で、被災地で社会からこぼれ落ちる人を出さないため、コミュニティレベルでのセイフティーネットづくりを目指す、センターの挑戦は始まったばかりだ。
取材・文/高橋 郷(遠野まごころネット)
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