大船渡市の雇用創出&地元住民主体型モデル【前編】

女性や高齢者が活きる地元雇用

大船渡仮設住宅

長洞地区の集会所

 多くの仮設住宅団地が抱える運営上の共通課題。引きこもりや孤立世帯、コミュニティ・自治会醸成の難しさ、活用されない集会所、集約・解決できず山積する住民の困りごと等。これらの問題を仕組みで解決している大船渡仮設住宅団地の運営体制に注目した。ポイントは地元雇用による住民サポートとコールセンターによるノウハウ蓄積だった。

県をまたいだ支援事業

 「大船渡仮設住宅支援員配置支援プロジェクト」。この事業を立ち上げたのは岩手県北上市、支援先として手を挙げたのが大船渡市だった。経緯は、北上市の地域自治分野で活動していたNPO法人・いわてNPO―NETサポート等の中心メンバーが、震災後にいわて連携復興センター(IFC)を立ち上げたことに始まる。IFCは北上市と協働支援協定を結び、被害が大きく機能低下していた沿岸自治体に代わって北上市が事務を執るかたちで事業計画を作成。これにいち早く希望を出した大船渡市に支援を開始した。事業案が持ち上がったのが2011年6月下旬、7月下旬に公募、8月上旬に採択され、人材募集を開始、9月1日には業務開始というスピード感だった。9月から今年3月までの7ヶ月間で、事業費計画は1億5000万円ほどになる。

大船渡仮設住宅運営

 本事業では、仮設住宅住民の生活支援とコミュニティづくりのために「支援員」と呼ばれるサポートスタッフを約80名、支援員をまとめる地区マネージャーを7名、コールセンター専門員を4名、大船渡市在住の被災者を中心に「緊急雇用採用創出事業」の枠組みで採用した。採用・管理に関しては民間の人材派遣会社、㈱ジャパンクリエイトに委託。月給15~19万円と市内の基本給では高い方であり、女性や高齢者でも働ける職種ということもあって約80人の募集に対し150人の応募があった。面接の結果採用されたのは、うち3割が仮設住宅住民、7割が女性だった。

 もともと住民自治のノウハウのあった北上市が大船渡市の各部署や社協と協力し、ジャパンクリエイトが人材募集・教育・管理で力を発揮、さらにIFCが外部NPO等の団体とつなげていく。つまり行政・民間企業・NPOが垣根を越えて連携した復興支援の形だ。

やりがいを感じる声多数

住民をつなぐ支援員の活躍

支援員の活動拠点分布図

地区マネージャーと支援員の活動拠点分布図

 大船渡市に建設された仮設住宅団地は、37箇所、計約1800戸。入居者は約4500人。6つに分けられた地区には、それぞれ規模に合わせて支援員6~22名、マネージャー1~2名が配属された。支援員は、平日朝8時半から夕方5時半まで各地区の集会所に管理人として基本常駐しながら、交代で1人につき30世帯ほどの担当世帯を毎日訪問し声かけを実施している。仮設住宅の生活に関する様々な相談に乗ったり、各戸をつないでコミュニティの強化を図る役割だ。地区マネージャーは支援員と連携し、働きやすい環境作りや課題の吸い上げ、調整を行う。最近は支援員の中からもやりがいを感じる声が多く上がっている。「声かけで笑顔が増えたお年寄りがいて嬉しい」、「会話の輪がご近所同士にも広がってきた」など、毎日通うことで信頼関係を築けている様子が伺える。ポイントは、被災者の生活のお手伝い役として働く支援員、その多くが同じく被災者である点だ。住民からは親しみを持って受け入れられ、人の役に立ちたいと奮闘する姿が地域に元気を与えている。

【後編へつづく】

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