東北復興における観光の役割を考える【前編】

震災2年目本格化する観光復興の展望

震災後、生活再建や1次・2次産業復興の陰で目立った動きの少なかった東北の観光産業だが、震災から1年が経過し、少しずつ明るいニュースが聞こえるようになった。官民一体となって進む観光復興への取り組みを追いつつ、その展望を探った。

官民の主な取り組み

キャンペーン、営業再開、リニューアルが目白押し

東北6大祭りの集結する東北六魂祭(東北観光博実行委員会提供)

東北6大祭りの集結する東北六魂祭(東北観光博実行委員会提供)

3月18日、観光庁と民間企業が共同で推進する「東北観光博」が開幕した。東北6県全域を博覧会会場と見立て、主要観光地域28ヶ所を「ゾーン」として設定、各地域で独自の観光コンテンツを提供して観光客を迎え入れる大規模キャンペーンだ。

目指したのは地域と観光客のふれあいの創出。各ゾーンの集客拠点となる鉄道駅には「東北・旅のサロン」が、地域の商店街などには「旅の駅」が設置され、常駐する地域観光案内人が観光客に対して滞在を楽しむための企画やプログラムを提案する。観光客には東北観光博パスポートが発給され、各ゾーンの旅のサロンでスタンプを押すとともに宿泊先の割引サービス等を行うことで、複数ゾーンへの訪問を促す。あわせて旅行事業者や交通事業者との連携による送客強化や、ポータルサイトによる行動情報の蓄積を行いながら、東北の魅力を発信していく。来年3月末までの約1年間で、震災前の水準である年間1億2千万人まで入込客数を回復させることを目指す。

観光復興

JRや岩手県が共同で行う観光企画が「いわてデスティネーションキャンペーン(DC)」だ。4月1日から6月30日までの3ヶ月間、全国の旅行会社等の観光関係団体が一丸となって岩手県の観光PRを行う。昨年世界遺産に登録された平泉や、東北6県の祭りが集結する東北六魂祭(5月26日・27日に盛岡で開催)など目玉となる観光資源を要する同県は、このキャンペーンで集客に弾みをつけたい考えだ。期間中に800万人の観光客の集客を目指す。

一方、来年DCを控える宮城県は、プレキャンペーンとして4月1日より「仙台・宮城【伊達な旅】春キャンペーンを開始し、情報発信の強化や各種イベントを開催していく。また、福島県でも2月〜3月に、対象宿泊施設利用者に対して県産のギフトや各種特典を提供する「ふくしまからありがとう」キャンペーンを実施するなど、各県における観光客獲得へ向けた動きが具体化してきている。

民間でも、震災の被害により業務に影響が出ていた施設の営業再開やリニューアルが相次いでいる。2月に営業再開した福島県いわき市の「スパリゾートハワイアンズ」や3月にリニューアルオープンした岩手県宮古市の「浄土ヶ浜パークホテル」など、地域を代表する観光施設の復活に期待がよせられている。

東北観光博で 発給されるパスポート

東北観光博で 発給されるパスポート

浄土ヶ浜パークホテル

元気に客を迎え入れる浄土ヶ浜パークホテルの従業員

外国人観光客の回復へ

政府主導で海外発信 長期目線で効果に期待

震災後、原発事故の影響もあり訪日外国人観光客が激減した。政府観光局の調べによると昨年1年間総計で一昨年比27%減の622万人。震災直後に比べると徐々に回復傾向にはあるが(図参照)次期観光立国推進計画に示された2016年までに1800万人という政策目標へ向けて、さまざまな対策が必要とされている。

東北地域においては、2月に海外7カ国の旅行エージェントやメディア約50名を招聘しての視察ツアーおよび交流商談会が実施された。外務省は海外向けPRテレビCMを作成。3種類の60秒CMのうち2つは東北関連のものとなっており、CNN等を通じて全世界で放送されている。

訪問外国人数の月別推移

また4月には「世界旅行ツーリズム協議会グローバルサミット(通称:観光分野のダボス会議)」が仙台で開催される予定。全世界から集まる国際機関・各国政府・メディア等の関係者約1000人に対して東北の復興状況を発信する重要な機会となる。

諸外国の動きでは、1月にタイ国政府観光庁と仙台市で「観光に関する相互協力協定」が再締結された。また韓国政府は3月に仙台市内に「韓日観光交流センター」を開設した。

海外への情報発信の動きは活発化しているが、現実は易しくない。今年に入ってから以降の訪日外国人数も1月・2月合計で123万人(前年度比11.5%減)と未だに低調。数字として結果が出るまでにまだ時間がかかりそうだ。

>>【後半へつづく】

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