岩手県は3月、被災者の個人情報を、県が適当と認めた団体に限り、要請に応じて開示することを決定した。これは、被災地において、NPO等民間団体によるきめ細かな支援を可能にする、他被災県に先駆けた決定だ。
これまで個人情報保護法が大きな壁となって、支援活動の妨げになっていることは、関係者の間で広く指摘されていた。例えば昨年の冬、民間賃貸住宅(みなし仮設)に入居している被災者に対し、NPOが中心になって暖房器具の配布を行ったが、その際にも保護法が障害となった。行政が把握している被災者の住所情報が明かされなかったためだ。結果、配布先の被災者の個人情報を確定するまでに数か月を要し、支援の遅滞を招いた。また現行では、他市町村や社協とも情報を共有できない行政の縦割りの弊害もある。今回の決定により、そうした問題も改善される。
「行政だけで被災地の多種多様なニーズに応じることは困難。NPO等支援団体との協働が今の社会では必要不可欠です」。岩手県復興局担当者はこう話す。
その一方で、開示された個人情報が、支援以外の目的に使用されることへの懸念も存在する。その点について県は、開示を行う団体の条件として、①支援活動が県との協働の事業である ②事業の公益性、個人情報を必要とする目的の整合性が確保されている ③個人情報を取り扱う団体として十分な基準を満たしている等の内容から、総合的に判断をするとしている。
個人情報の取り扱いには、もちろん慎重を期さなくてはならないが、今回の岩手県の決定が、同様の問題を抱える他の被災県にも、先行事例として追い風の役割を果たすことを期待したい。
取材・文/高橋 郷
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