日本弁護士連合会は被災者を対象に行っている無料法律相談の分析結果を発表した。第4次となる今回の分析では、震災後約1年間で寄せられた約3万5千件の相談が対象となった。
相談事例は、不動産賃貸借、住宅ローン、保険等、23に分類され、県および市町村ごとに件数がまとめられた。どの地域でも多かった震災関連法令に関連する相談に加え、福島県では原発関係、津波被害が深刻だった岩手県・宮城県沿岸部では遺言・相続や住宅・事業ローン、都市部では建物賃貸借契約に関連する相談件数がそれぞれ多いなど、住民の抱える課題の地域差が明確に反映される結果となった。
日弁連や有志の弁護士らは、震災直後から電話や避難所等における面談で無料法律相談を実施し、定期的に相談事例の分析結果を発表すると共に、知見を活かした被災者支援に力を入れてきた。これまでに、被災者から多く相談のあった情報をまとめた冊子『復興のための暮らしの手引き』を発行したほか、相談事例のデータを示して、現状に沿った法改正を国に働きかけ、相続や二重ローン問題に関連する法や制度の改正においても成果をあげてきた。
情報分析の責任者である日弁連災害復興支援委員会幹事の岡本正弁護士は「今後は、分析結果を地域行政に届け、まちづくりに役立てて欲しい」と話す。住民の声をまとめた膨大なデータの、復興計画の立案や推進への活用が期待される。
岡本氏は、相談事例のデータを今後の災害の備えとしても活用できると指摘する。現在進められている防災計画で被害を軽減できても、完全に被害をなくすことはできず、必ず発生する被災者を有効に支援する必要がある。例えば初動でインターネット環境がない場合における行政や金融機関からの基本的な情報提供手段の確保や、生活の再建に必要な情報の選別等を、各自治体が予め実施または計画しておくことで、迅速な対応ができるだろう。
日弁連は、引き続き電話による無料相談を受け付けており、最終的な分析結果を、今年夏から秋頃にまとめる予定。情報分析結果は日弁連のホームページで公開されている。
【日弁連HP】http://www.nichibenren.or.jp/
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