ゴールデンウィークの連休は東北六県を旅した。三陸海岸から下北半島を抜け、本州最北端は大間崎で鮪を愛で、秋田で比内地鶏を堪能した後、山形で蕎麦をいただき、最後は喜多方ラーメンで締め帰京した。東北の食文化の豊かさと、雄大な自然を満喫させていただいた。
今回の旅で温泉に目覚めた。なんせ、至るところにある。日帰りであれば三百円ほどで楽しめる。特に素晴らしかったのが、青森と秋田の県境にある古遠部温泉。携帯電話も通じず、未舗装の山道を進んだところにひっそり佇む秘湯だ。とにかく湯量が半端なく、溢れ出た温泉成分で宿全体が鍾乳洞みたいになっている。
桜もまた見事だった。東北の桜は、長く寒い冬を乗り越えたからこそ、美しく咲く。比喩ではなく、ソメイヨシノは夏の間に翌年の花芽を作り休眠し、一定期間、寒い冬を経ることで、休眠から目覚めて開花の準備を始める。桜が美しく花開くには、暖かい春だけでなく、寒い冬が必要なのだ。
この国には厳しい冬があり、火山があり、地震がある。同時に、桜が咲き誇り、温泉が身体を癒してくれる。自然は多くの試練と、豊かな恵みを与えてくれている。そんな当たり前のことを、当たり前に思い起こさせてくれた東北旅だった。(T)
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