きっかけは上國料さん自身の体験だった。「4歳と9歳の子供がいるのですが、毎日のように『今日は外で遊んでいい?』聞かれていました。ほかの子供たちも同じなんだろうなと。だから、自然の中でのびのびと活動できる機会をつくってあげたかった」。
開始当初は不定期だったが、活動が軌道に乗った現在は週に一度の実施に。行き先は、おもに猪苗代湖湖畔にある「郡山市少年湖畔の村」。10時頃に現地に着き、午前中は森や湖畔の自然散策などの外遊び、昼食をはさんで、午後は屋内施設での活動、夕方に帰宅というのが、通常の流れだ。基本的に午後は昼寝の時間としているが、今まで寝た子は一人もいないという。
「移動保育の目的は、子供の被ばくを避けることも、もちろんありますが、これが一番ではありません。子供と親のストレスを軽減したいというのがなによりの大きな目的。移動保育はその手段なんです」。
実際、家庭で定期的に子供を保養に連れて行くのは大きな負担になる。また、子供向けの短期保養や屋外活動のプロジェクトは小中学生向けが多いなか、未就学児まで対象としているのは貴重だ。
福島に育ったから、さまざまなことを制限されたと子供たちに思ってほしくない、と上國料さんは言う。
「『逃げるか留まるか』という二者択一ではなく、『福島に住んでいる』という現実からスタートし、その上で多様な選択肢を子供たちに並べてあげたいのです」。
●「移動保育プロジェクト・ポッケア」の問い合わせはTEL:024(925)0245
取材・文/ふくしま連携復興センター・遠藤惠
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