ヤフー株式会社は7月、石巻に現地事務所を開設することを決めた。同社が復興支援に特化した拠点を持つのは初となる。
同社はこれまでも、「ヤフーだからこそできる復興支援の形」を模索し、被災地域の事業者等と協力して東北地方の特産品などをウェブ上で販売するオープンプロジェクト「復興デパートメント」をはじめとしたさまざまな活動に取り組んできた。復興デパートメントは、オープン3ヶ月にして単月の売上が100万円を超える店舗も複数登場し、今年の3月、5月はサイト全体の月間売上が1000万円を超えるなど、復興支援の一つの形として効果が現れてきている。
そのような支援を行うなかで、同社は被災地が抱えるさまざまな課題の解決を意識し、現地の人々との対話を続けてきた。そして、現地の課題に一歩踏み込んだ形で取り組むために、石巻に拠点を作ることを決定したという。被災地の中でも石巻を選んだ理由には、復興デパートメントの出店などで地元企業とつながりがあることと、被災地の中で産業規模が比較的大きいことが挙げられる。
ヤフーは、これを機に本格的な復興事業に乗り出す。EC(ネット上の商取引)と情報発信の2つの事業を柱に、土台としてのITナレッジの育成やブランディング、マーケティング支援を行い、被災地発の魅力ある商品をこれまでにも増して打ち出していく方針だ。可能性ある現地企業と恊働することは、自社のチャンスとも捉えている。
CSRからCSVへ 企業は専門性を活かした活動展開を
震災から2年目の今は、「復興のおどり場」とも言われる。中長期的な復興において重要なフェーズでありながら、成果が見えにくく、多くの支援者たちも離れていく時期だ。だからこそ、被災者・被災事業者が自立し、自ら発展していけるための支援を、寄り添いながら長期的に行うことが重要になってくる。
現在も、被災地域に定期的に入って長期的な支援活動を展開している企業は多い。しかし、企業による地元経済活性化への期待は高いものの、今のところ、現地への実質的な効果については、なかなか厳しいという見方もある。また、これまで、さまざまな企業から捻出された復興支援金は、総額で約1000億円にも達しているが、実はその半分がまだ使い道が定まっていないとの指摘もある。
こういった状況を鑑みるに、今後の継続的な復興支援には、資金だけでなく、企業が本業の専門性を活かした支援や、新事業の開発に貢献することなどが期待されている。すなわちCSR(Corporate Social Responsibility)活動から、事業の中で継続的に支援をしていくCSV(Creating Shared Value)活動への転換だ。
社会問題解決と企業の発展を両立する支援体制を整え、お互いがwin-winとなるような継続的な関わりの設計が求められていく。今回のヤフーの石巻支社開設には、被災地における企業のCSV活動の好事例となる期待が寄せられている。
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[…] このYahoo!の取り組みに関しては東北復興新聞さんの記事にある通りですが、 その記事に以下の記載があります。 中長期的な復興において重要なフェーズでありながら、成果が見えにくく、多くの支援者たちも離れていく時期だ。 […]