陸前高田未来商店街から考える仮設商店街の課題と未来

都市計画を大枠で捉え志のある商店から一日でも早い復興を

仮設商店街『陸前高田未来商店街』の入り口

仮設商店街『陸前高田未来商店街』の入り口

被災地に続々と仮設商店街がオープンしている。規模は数店舗のものから50店舗を越えるものまでさまざまだが、地元で復興しようという想いは共通している。

陸前高田にある『陸前高田未来商店街』も、そんな想いを持った仮設商店街の一つだ。現在は、プレオープンというかたちで4店舗が営業中である。最初にオープンした2店舗のうちの一つ、『ファッションロペ㈱東京屋』を経営する小笠原修さんは、陸前高田駅通り商店街に構えていた52年続く店を津波で失った。倉庫と自宅も失ったが「住み慣れた陸前高田でやれるなら頑張ってみよう」と地元での店舗再建を決断。高田町の被災商店主と協同し、ウェブを活用して全国から支援を募るなどして、2月14日に営業再開に漕ぎつけた。

商店街で衣料店を営む小笠原さん夫婦

商店街で衣料店を営む小笠原さん夫婦

小笠原さんは「未来商店街を陸前高田における商店街の核にしたい」と意欲的だ。ほかにも、住民が集って憩える場にしたいなど、商店街への夢は尽きない。未来商店街は、商店街の復興ビジョンを策定するため、東京大学の小泉秀樹准教授(都市工学専攻)らと共にワークショップも開催した。商店主たちが集まってざっくばらんに意見交換を行い、東大を中心とした専門家チームがニーズの整理を行う。このような専門家の協力も「上手く利用していきたい」と、小笠原さんは意気込む。

コミュニティの核となる 活気ある商店街に

未来商店街のような仮設商店街の抱える課題のなかでも、建設・設置の遅れは深刻だ。小泉准教授は「仮設にもかかわらず1年以上経ってもまだ完成していない部分が多い。仮設が建たないということは見通しが立たないということ。時間がかかると商店主も地元での営業再開を諦めてしまう」と指摘する。実際、未来商店街がオープンしたのは震災後1年近く経った今年2月に入ってから。グランドオープンは今年秋を予定しているが、手続きや建設の遅れからそれ以降にずれ込む可能性もあるという。

陸前高田市には、2011年度から3年を復興整備期、2014年度から5年間を復興展開期として、計8年で『災害に強い安全なまち』、『快適で魅力あるまち』など6項目の目標を達成する復興事業計画がある。しかし、57ページに及ぶこの復興計画に対し、「8年間も仮設で商店を維持しなくてはならないのか?」と、小笠原さんは不安を募らせる。計画では、全面的な低地部の嵩上げなどが商店街の建設に先だって行われるため、迅速な本設商店街の復興は現状では難しい。

これに対して、小泉准教授は「未来商店街のような志を持って新しい商店街をつくろうとしているところは個別に復興させてあげればいい。都市計画の大きなフレームを決めておけば、最終的に大きな齟齬は生じないはず」と言う。

さらに、本設への移行を見据えて仮設商店街を設置することも重要だ。仮設の設置場所が適切で、かつコミュニティが問題なく形成されれば、本設の商店街を一から作り直す手間を省くことができるうえに、より安定した持続可能な商店街の形成が期待できる。場合によっては、予定を早めて本設に移行することもできるだろう。『平等を期すため』などという理由から画一的な復興を目指すことは得策とは言えない。

仮設商店街において重要なことは、都市計画を大枠で満たしたうえでの柔軟性と即時性だ。一日も早く商店街が恒常的な活気を得て、コミュニティの核として機能するため、専門家がコミュニティに寄り添ってソフト面から支援することも求められている。地元での復興という険しい道を選んだ商店主たちの志が果たされることを願う。

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