あるべき社会の再確認を
都市計画の専門家が組織するNPO、都市計画家協会が6月16日、被災地の復興プロセスに関する提言を公表した。同協会は昨年すでに復興に関する2つの提言を行っており、今回が第3弾。また、機関誌『プランナーズ』も、東日本大震災復興特集号として同日発行された。同協会は震災以来、さまざまな地区・地域のまちづくりに専門家として参画してきた。今回の特集は、都市計画家協会の取り組みの現場からの報告と、その知見を踏まえた今後の復興計画策定に向けた提言をまとめたもの。このなかで東京大学生産技術研究所の加藤孝明准教授は、災害から2年目を迎えた今を「落ち着いて考える最後の機会」と位置づけ、個別の事業の成功にこだわって復興の本質を見失わないよう、住民が一体となって計画の全体像を改めて考える必要があると述べた。これは、事業に落としこまれたミクロな復興計画が目的化し、本質的な復興が全体として行われないことに対する危機感を表明するもの。解決するためには復興事業を推進する人と、人間関係が最重要として、推進力のあるリーダーのもとで5~10年のロードマップをコミュニティ全体で作成することを提案している。
「俯瞰しつつ寄り添う」 専門家の支援
『プランナーズ』の編集長で、同協会副会長の渡会清治氏は、まちづくりにおいて、専門家は「住民と違う経験を持って住民と一緒に考える」ことが重要と述べる。例えば、技術的な課題の検討や、専門家同士の横のつながりを活かした情報共有等を行うことで、住民の動きを後押しすることができると言う。
これを踏まえ、渡会氏は、都市計画家協会の基本スタンスを「俯瞰しつつ寄り添う」ことと説明する。情報基盤の整備、シンポジウムの開催、まちづくり地区へのプランナー派遣等を具体的な施策として挙げ、今後も継続して積極的な支援に取り組むことを強調した。
被災地のまちづくり成功体験の蓄積は、今後の日本社会の都市・地域のあり方の先行モデルとなる。都市計画家協会がまちづくりの知と情報を共有することで、地域復興が効率よく水平展開されることを期待する。
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