被災地に求められる「復興まちづくり」。今後の災害を想定しつつ、元の場所で復旧か、高台への移転かを、コミュニティが主体となって決める必要がある。官民および住民同士の合意形成や将来のコミュニティ復興に向けた、課題と対策を考察する。
市町村別の復興計画は昨年末に策定が済んでいる。この内容を住民と共有し、本音で議論し、今年度中を目指して地域復興計画を確定する必要がある。
しかし現実には、行政職員の数が足らず、情報共有や意見のすり合わせが十分ではないケースが見られる。また、漁民・商業者は元の場所に戻りたい、一般住民は高台に移転したいという住民同士の意見の違いもある。このままでは、住民が望まない方向に復興計画が進み、住民流出が加速する結果となりかねない。すでに数千人単位での人口流出が進んでいる地域もある。そうした事態が顕在化すれば、まちの復旧すらもままならず、産業再生、教育、医療など 個別テーマの支援はほとんど無意味となってしまう。
こうした課題を解決するには、「外部人材によるコーディネート」と「コミュニティにとって使い勝手のよい財源」の二つが要件となるだろう。行政と住民だけでは対立構造が続くが、外部専門家・コンサルタントが間に入ることで、建設的・論理的なコミュニケーションを両者がとる事ができる。国土交通省は「復興まちづくり人材バンク」で専門家をリストアップしており、阪神・中越で活躍した専門家を派遣する民間組織もある。また、内閣官房の地域づくり支援事業や交付金における効果促進事業など資金の手当もついている。被災市町村には、外部専門家を受け入れる仕組みを整えることが求められる。
一方コミュニティの復興においては、適切な財源確保が効果的だ。コミュニティ復興は(1)復興を熟議する施設の整備(2)地域コミュニティ活性化のイベント実施(3)自律的復興のためのプラン策定、といった順番で進むが、それぞれで10~100万円程度の費用が必要となる。現在、民間資金はNPOのみに流れ、公的資金は市町村の公的設備復旧に使われている。つまり、地域コミュニティ向けの適切な財源がない状況である。中越の復興で役割を果たした、民間に開かれた復興基金など、同様の仕組みが今求められている。
(文/藤沢烈・RCF復興支援チーム)
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