宮城県亘理町「わたりグリーンベルトプロジェクト」に学ぶ【前編】

住民参加型まちづくり防潮林再生プロジェクト

防潮林の再生を通じて亘理町のまちづくりを考える「わたりグリーンベルトプロジェクト」が本格始動している。「住民中心」「住民起点」をうたうまちづくりプロジェクトは多いが、なかでも亘理町は、対立しがちな行政と町民が一体となってプロジェクトを進めている。一体、成功要因はどこにあるのだろうか。

仙台から車で1時間弱。人口約3万5千人(2010年)ののどかな町は仙台市のベッドタウンとして成長し、震災前まで人口は増加傾向にあった。はらす飯や笹かまとならんで名を馳せた亘理町のいちごは東北一の出荷高を誇ったが、震災による津波の影響で農場の94%が浸水、再建の目途が立たない農家も多いという。

ここ亘理町で進められている「わたりグリーンベルトプロジェクト」は、住民や地元の事業者、また地元出身の大学生等で構成される「わたりグリーンプロジェクト運営委員会」が主催するまちづくりプロジェクトで、主に2つの活動で構成されている。

1つは、津波でなぎ倒された町南部の防潮林を再生させること。伊達政宗の時代に作られて以降、津波、高潮、飛砂、潮風等から住民を守ってきた防潮林の復活を目指し、現在はそのベースとなる苗木をつくっている。4万個の苗ポットを作り、2014年頃からの植林を目指している。

もう1つは、主に沿岸部のグランドデザインを策定することで、この活動は亘理町震災復興計画事業に組み込まれている。対象エリアは防潮林やその周辺にある沿岸地域で、「みんなでこせっぺ!おらほの森」(みんなでつくろう!私たちの森)と題した全5回のワークショップを通じて策定される。

官の計画を民が実行

わたりグリーンベルトプロジェクトは、「自治体と住民が連携したまちづくり」としてスポットを浴びている。もちろんこのプロジェクトも他の活動同様、長期的活動のスタートラインに立ったばかりではある。しかし見習うべきポイントは多い。

その1つが、自治体との役割分担にある。一部の沿岸地域において、町の作成した復興計画の具体化であるグランドデザインづくりは、「わたりグリーンベルトプロジェクト運営委員会」が担っている。つまり、官の計画を民が実行するという役割分担が、プロジェクトの推進力につながっている。

ただし、ここで言う「民」は「官の下請け」として機能するものではない。震災前は100億円程度だった亘理町の年間予算規模は復興のために607億円にまで跳ね上がっているものの、役場職員は1割程度しか増えていない。「自治体の手が回りづらい点を、民である私たちが補完させて頂いている」と事務局長の松島宏佑さんは解説する。活動内容も、自治体と対話しながらブラッシュアップし続けた。震災直後、自治体には大手企業などからも多くの提案が寄せられたが、着地点を見つけるまで対話を続けたのが、同プロジェクトの運営委員会だったという。



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取材・文/齋藤 麻紀子

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