住民参加型まちづくり防潮林再生プロジェクト
様々な立場から参画できる仕組み
多くのまちづくり団体が頭を悩ませるのが、住民の参画方法だ。「住民中心」をうたうからには一人でも多くの住民に参画してほしいが、その方法に頭を悩ませる。
同プロジェクトには、様々な立場の住民が参画している。例えば、種とりや植樹といった防潮林づくりは、小学校の「地域学習」や「防災学習」の授業に組み込まれている。町の将来を担う立場であるものの、参画が難しいとされてきた子どもたちの参画を見事に仕組み化した。
種苗・ 造園関係者等の事業者にも声をかけた。一般的に、利害関係者が多いほど調整は難しくなるが、「派生するビジネスは、大手企業ではなく亘理町の事業者に担ってほしい」と、あえて輪に入ってもらったという。
もちろん地域住民との連携も忘れていない。事務局長の松島さんや長期インターンシップで現地に入る若者が中心となり、震災直後から頻繁に家庭を訪れている。時にはヘドロ撤去作業を手伝いながら人間関係を構築しており、これがプロジェクトの強固な基盤につながっている。
大きなビジョンより地に足のついた計画を
抱えている課題が無いわけではない。現在の復興計画を遂行するには、一部の土地を町民から提供してもらわねばならず、その交渉と予算の確保は急務だ。さらに防潮林が完成しても、これまで管理を担ってきた集落はもうなく、新たな担い手の発掘が必要になる。
プロジェクトの発起人で地元の住民および事業者である加藤登さんは「現実を見据えて課題を一つひとつ解決したい」という。「復興」という枠組みにおいては大きな夢を語りたくなるが、あくまで「現実」に即した行動が必要だという。「震災直後、町に提案された復興計画の多くには、大きなビジョンが描かれていたらしい。でも私たちは、町という単位で実現できる ”現実的な案“を考え続けた。」
提案書を最初に町に提出したのは昨年だが、自治体と一緒に動けるようになったのは今年の4月くらいから。まさに「我慢比べ」と言えるが、現実を見据え「地に足のついた夢」を描き続ける姿勢こそが、真の成功要因かもしれない。
ワークショップで出た住民たちの思い
町内のすべての皆さんに喜ばれる防潮防風林を作れたら、最高の後継者へのおくりものと思います。(70 代男性)想い出の集積地。
後世の人たちが、自分たちの祖先がどのような想いをもってつくったものなのかがわかるようにしたい。(20 代女性)
嫌な時でもいけば楽しくなる、また行きたくなるような森。(70 代女性)
津波の勢いを抑えてくれる防風林。 夏涼しく、又雪を塞いでくれるような防風林。 自然と共存できる防風林。休息しやすい防風林。(40 代男性)
小さなこども達の声がいつも聞こえるような、楽しい公園のような場所ができて欲しい (60 代女性)
ワークショップで出た住民たちの思い
※第1回目ワークショップの報告書「皆が想像する未来の防潮林」より抜粋。
取材・文/齋藤 麻紀子
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