東北被災地は、以前から過疎化が進んでいた地域で、若い世代の流出も進んでいます。そうした地域を復興するにはどうすべきか。そのヒントとなる書籍を選びました。紹介する3冊は、中越地震での集落形成について書かれたものです。
『帰ろう山古志へ―旧山古志村民の体験』
よしたー山古志 (新潟日報事業社, 2006)
コミュニティを形成するために重要なのは、そこに戻りたいという想いです。この本には、旧山古志村民92名の地震発生時の恐怖と、仮設住宅に住む生の言葉が綴られています。長島忠美村長(当時)の想いから始まります。
「『ふる里を捨てるのではない! 必ず戻って緑の村を取り返す』これが、私が私にした約束です」
村民の皆さんも共通の想いを持っています。「何一つ不自由のない生活をさせてもらいました。しかし、山古志は忘れることはできません。山古志に住ませて下さい。お願いします」(五十嵐サト)
東京からみれば限界集落であっても、被災者の皆さんから見れば絶対に戻りたい故郷なのです。
『限界集落の真実 過疎の村は消えるか』
山下祐介(筑摩書房,2012)
限界集落という言葉から生まれる誤解を指摘した一冊です。限界集落とは65歳以上の高齢者が半数をこえる地域のことを言います。しかし集落は高齢化が進むから消えるのではありません。村を出た人が戻らないことで消滅していくのです。苦労を越えて地域に戻りたい人が多い山古志村や、東北の集落は簡単には消えません。むしろ、働く場として住んでいただけの市街地の方が人口流出は進みます。限界集落の方が復興は早いのです。
『中越地震 復興公論』
(新潟日報社,2006)
最後は、中越地震に市民の目線から必要な復興政策をまとめた一冊です。東北同様、中越でも被災地からの集団移転が実施されました。ただし、この事業を使えば自治体負担は少なくなる反面、住民が元の土地に戻ることはできません。山古志村で代わりに用いられたのは、小規模住宅地区改良でした。この制度を使うことで、集落に残ろうとする人々が支えられました。元の地域に戻るための仕組みは既に用意されています。必要なのは、一致団結した被災者の声です。
こうした書籍を通じ、「復興とは何か」についての見方が変わる方も多いはずです。遠くからの評論ではなくて、被災者の声を集めた復興へ。”寄り添う”という言葉をもう一度捉え直すきっかけになるかもしれません。
(文/RCF復興支援チーム・藤沢烈(@retz))
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