被災地からの情報発信を考える【事例1】

いま、何を伝えるべきか。
事例に学ぶ情報発信のコツと展望

「東北に行こう」「東北の食を楽しもう」と東北支援に湧いた2011 年とは異なり、例えば食材ひとつとっても「新鮮な魚です」「安心・安全です」といったアピールだけで消費者の関心を惹くことは難しくなってきている。東北に対する“ 好意的な目” が薄れつつあるいま、被災企業は一体何を発信すべきか。2つの団体の事例、及び専門家の意見をもとに考察した。

【事例1】アクティビティを通じた発信が人を巻き込むカギ
 ー株式会社OH!ガッツ 立花 貴さん

〝言葉より体験〞震災後800人を雄勝に

オーガッツの活動ステップ
 「オーガッツ」は宮城県石巻市雄勝町の漁業再建を目指し、地元の漁師たちが立ち上げた会社だ。1口1万円で牡蠣などを予約販売し、購入した消費者と共に漁業と町を育てる「そだての住人」制度を開始、集まった資金を再建および会社の運営資金に充てる。6 月末の段階で、約1700人から義援金を含め4200万円を集めた。
 事業成功の鍵は、「そだての住人」を増やし交流人口を拡大すること。そのため雄勝の魅力や制度の意義を伝えていく必要があるが、発起人のひとりである立花貴さんは、ネットやチラシより「現地を見てもらうこと」にこだわる。家族の住む東京から定期的に雄勝に通う立花さんは、この1年半で160往復する過程で、約900人を現地に連れていった。
 もちろん、ホームページやブログ、フェイスブックなどのツールは利用しているし、ロゴやコピーは有名なクリエイターに制作してもらった。しかし「被災地の現状は、感じてもらうのが一番。興味を示した人には、まず現地を目の当たりにしてもらう方がいい」と立花さんは言う。

アクティビティを通じて〝感じて〞もらう

 現地には豪華な料理も宿泊施設もないが、来訪者の多くは「雄勝のファン」になる。理由は、”アクティビティ“の提供にある。「漁業体験はもちろんのこと、自ら釣った魚を朝ご飯にする、裏山で山菜を採ってお昼ご飯をつくる、近くの山に登る、星を見ながらお風呂に入るなど、さまざまな体験をして頂いています。地域の良さや自然の素晴らしさを ”考える“のではなく”感じて“もらうことがポイントです」。
 「そだての住人」との関係性を維持するため、イベントは毎月実施。「初日の出」や「花見」など季節の行事はすべてイベントにし、人が集まる場を作る。さらにビジョンを「そだての住人」にも提示し、生産者と消費者という関係を超えた一体感をも醸成している。「情報を伝えるのではなく、想いを伝えることが重要。相手の心に、後に花となる種を植えられるかどうかがポイントではないでしょうか」。

オーガッツ育ての住人

(左)「そだての住人」との花見会(右)「そだての住人」と地域の漁師を交えた夕食

→被災地からの情報発信を考える【事例2】
→被災地からの情報発信を考える【専門家に聞く情報発信のコツ】

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