【事例2】消費者との交流で見えた“自らが伝えるべきこと”
ーwakamo 理事・営業部長/漁業生産組合 浜人 阿部勝太さん
震災前のものづくりは“作業”だった
津波被害を受けた漁師たちは震災後、「早く元に戻さねば」と口にしたが、20代の阿部勝太さんは「変化」が必要と感じた。ひとつの取組みとして、「三陸ワカメ」と一括りにされてきた十三浜のワカメをブランド化すべく、イベント等で直接消費者に提供したところ、十三浜の認知向上に加えて自らの変化にもつながった。
「”ワカメはなぜ体にいいの?“という質問にも上手く答えられなかった。また消費者の放射能に対する不安は、生産者が想像する以上に強いことを知った。消費者との交流を通じて、震災前に行っていたワカメ漁は”ものづくり“ではなく”作業“だったと気づきました」。
結果、放射能検査の委託機関を増やし、さらに安全性をアピールできる体制を確立。また地元漁師との勉強会を発足させ、ワカメの栄養価や美味しい食べ方を勉強し発信しているという。
飲食業者の役割は食材本来の姿を伝えること
7月から、都内のベジタリアンフードレストラン「渋谷村やさい食堂」にワカメを卸す試みを始めた。同店舗を運営するウィルプランニングにとっても生産者からの直接仕入れは初めてで、取引をきっかけに「ワカメ本来の姿」を知ったという。
「ワカメは、通常乾燥した状態で流通します。また生のワカメを塩漬保存した『塩蔵ワカメ』であっても、グラム換算で取引されるせいか、塩がたっぷり盛ってあるものがほとんど。でも直接仕入れたワカメには必要最低限の塩しか使われていないし、色も歯ごたえも全然違う。私たちの役割は”食材本来の姿“を伝えることだと思いました」。(ウィルプランニング代表取締役 横川毅さん)
「消費者との触れ合いによって、”いい変化“がたくさん生まれています。これまで漁師の仕事には”朝が早い“”儲からない“などネガティブな印象がつきまとっていましたが、これからは自らが楽しんで働き、”漁師は楽しい仕事“だということも合わせて伝えていけたらいいですね」。
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