Q:地域に根ざした団体や企業でも、広く情報発信をする必要はありますか。
また何から始めるべきでしょうか。
A:
「どう伝えるか(How)」ではなく
「何を伝えるか(What)」を考えてみては
「情報発信」「コミュニケーション」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、スタイリッシュなサイトやチラシにこだわったり、全国に向けた大々的な発信をする必要はありません。どのように伝えるか(How)ではなく、「私たちは何者なのか」「何をしたいのか」という「What」を考え抜くことが大事だからです。
例えば、めまぐるしい変化に対応した結果、震災直後に比べて活動内容が変化した団体もあるでしょう。本格的な復興フェーズに入るいま、メンバー全員でいま一度「What」を考えてはどうでしょう。電通が社会貢献活動としてNPO向けに実施しているセミナー「伝えるコツ」では、他の団体と一緒にワークショップを行いますので、自分たちの立ち位置がくっきり見える効果もあります。
5月にセミナーを実施したあと、石巻では情報発信が盛んになりました。取材を誘致するためのプレスリリースを発信する「プレスリリースブーム」が起こったんですよ。
「伝えるコツ」の一部をご紹介します
例❶ 情報の量を整理しよう
取引先や知人と話したあと、「結局、何が言いたいの?」と聞かれたことはありませんか。伝えたい気持ちが強いほど色んなことを話してしまいますが、かえって伝わりづらくなるものです。
文章も同じです。あなたの企業や団体のチラシやパンフレットは、小さな文字で埋まっていませんか。これでは読む前にうんざりしてしまいます。一番言いたいことだけに絞り、思い切って情報量や文量を減らしてみてください。まずは手にとった人に「読みたい」と思ってもらうことが先決です。
例❷ トーン&マナーを意識しよう
話し方は人それぞれ。情熱的に熱っぽく話す人、論理的に淡々と語る人など、話し方には人格が表れます。
文章も同じです。文章の人格を、「トーン(調子)」と「マナー(態度、物腰)」を略して「トンマナ」といいます。事実をもとにしたロジカルな文章、思いを込めた情熱的な文章など・・・どれを使うかは自由ですが、団体や企業の「人格」に沿った文体を選びましょう。
Q:放射能対策として検査報告書等で「安全」をアピールしていますが、
消費者の不安は消えません。他にどのような情報を発信すべきでしょうか。
「安全」をアピールすることはとても大事なことです。でも、検査報告書等を公表しても、消費者の不安を全て払拭することは難しいでしょう。ですから私は、必ずしも消費者全員に理解を求めようとしないことが大事と考えます。A:
消費者の25%は「被災地を応援したい」
「安全」に加えて企業の
「ストーリー」を語ってほしい
大手経営コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーは、東北の食に対する消費者の意識を「安全第一主義」「合理的判断」「被災地応援」「価格至上主義」の4つのセグメントに分けています。去年11月に行った調査によると、被災地の産品の購入を避けたいという「安全第一主義」セグメントが約25%に上ったものの、被災地の産品を積極的に購入したいと考える「被災地応援」セグメントも約25%存在しました。ですから、まずは安心・安全への取組みを盤石にしつつ、「被災地を応援したい」と考える25%に商品を提供するのがよいと思います。
東の食の会の会員でECサイトを運営する「Oisix」ではこれまで、震災前に冷凍保存し津波を逃れた「復興枝豆」、津波から奇跡的に回収された秘伝のタレを使った「金のさんま」等を販売し、すぐに売り切れました。おそらく「被災地を応援したい」という25%の方々に、商品の背景にある「ストーリー」が伝わったからだと考えます。
ストーリーの発信は、「合理的判断」セグメントにも有効だと考えます。商品や食材の品質に加え、生産者の思いや商品の開発秘話などの「ストーリー」が商品の付加価値につながり、購入のきっかけになるからです。現在「東の食の会」では、「東北6県ROLL」プロジェクトを実施しています。有名シェフが東北の食材を使ったレシピを提供するという「面白さ」を前面に出しながら、生産者のこだわりや思いを伝えるプロジェクトです。より多くの消費者に東北の素晴らしさを伝えるべく、私たちも頑張ります。
→被災地からの情報発信を考える【事例1】
→被災地からの情報発信を考える【事例2】