これもアート!心を豊かにする プロジェクト
女川常夜灯「迎え火プロジェクト」
8月13日に宮城県女川町で実施。震災の記憶を次世代へ繋ぐことを願い「小さな火を囲み語らう時間」を女川の年中行事とすべく地元住民が発案。美術家の小山田徹ら「対話工房」が共に企画した。地盤のかさ上げを前に、各々の自宅跡地に「迎え火」を灯す。
マイタウンマーケット
福島県相馬郡新地町の仮設住宅に「1日限りの小さな町」をつくりあげることで、ふるさとを想う気持ちをカタチにするプロジェクト。大人と子供が思い思いに「町のパーツ」を表現したお店を出し、それらを市場のように並べて「町」を手作りする。
未来を歌に
宮城県南三陸町にある5校の小学生による、歌づくりプロジェクト。子どもたちがメンタルダウンを起こさないよう、震災当時の記憶を歌としてアウトプットし、心に沈殿させない効果を狙った。
経済指標には表れないアートの価値
復興の現場で、アートはどんな力を発揮するのか。アートイベントの主催者や文化事業を推進する団体など多くの方々に、質問させて頂いた。
瀬戸内海に浮かぶ直島のベネッセアートサイト、新潟県の越後妻有アートトリエンナーレは、アートが地域おこしや観光客誘致に寄与した好事例だ。東北にもこのようなケースがあるのでは、と取材を繰り返したが、予想に反し取材をしたすべての活動は観光や雇用などの経済的指標ではなく、むしろ「心を刺激する何か」という曖昧模糊としたものに期待を寄せていた。
地域活性化におけるアートの可能性を調査した参議院第三特別調査室の小林 美津江氏は、アートの経済的な価値を大いに認めつつ、「文化芸術は地域活性化のための施策とは無関係に、多様な価値観を持ちそれ自体が目的となる」としている。「文化芸術により地域のアイデンティティや魅力を確立し、情報発信することで、住民が誇りを持ち、人々からここに住みたいと選ばれるようなまちづくりに繋げていけるというのだ。
アートというと、美術館のガラスケースの中にあるもの、身なりを整えて鑑賞に行くようなものを思い浮かべがちだったが、本来はもっと身近に、生活に寄り添ってあるものなのではないかと気づいた。例えば一枚の大漁旗。船主の無事を祈り豊漁を願う気持ちが、縁起物の意匠や鮮やかな色で表現されている。これも立派なアートだろう。
アートは生きることの記録であり、制作、鑑賞は他者と生き様を分かち合う行為ではないか。そして、アートが生み出す「生への動機」や「共感」は、被災地内外の多くの人が協働して取り組むべき復興の長い道のりに、不可欠なものの一つなのではないだろうか。そのように感じた。(齋藤麻紀子、畔柳理恵)
※「アート」の定義は様々で「文化」「芸術」と表現する企業や団体もありますが、本紙では引用部以外はすべて「アート」で統一しました。
→アートの力〜芸術・文化は復興を後押しするか〜【上】
→アートの力〜芸術・文化は復興を後押しするか〜【中】