「漁業以外も支援対象に」南三陸町・酪農事業者が語る再建の課題

農場再建に苦戦しているという阿部さん

農場再建に苦戦しているという阿部さん

沿岸部を復興するため、国や自治体は水産業の再建に力を入れている。しかし他産業に従事する住民も当然存在しており、特に海沿いに山が連なる南三陸町では震災前、農業や酪農もさかんだった。

震災前、酪農事業を営んでいた阿部俊幸さんは、先代の体調不良のため22歳の若さで後を継いだ。その農場は津波被害にあい、いまだ再建できずにいるという。現在は、牛の蹄(ひづめ)を管理する「牛削蹄師」として収入を得ている。

最大の壁は、資金調達だ。再建費用は乳牛30頭規模の想定で2千万円以上。牛舎に約1千5百万円、乳牛に約1千万円、その他機械等に最低でも2千万円と、初期投資額は大きい。

阿部さんは当初、同業者がグループになることで設備投資費用などの4分の3が助成される「グループ補助金」の申請を検討していた。しかし、この補助金は助成割合の高さから初期投資額の大きい事業には向いているが、建設した施設を共有することになるため、乳牛の管理・育成方法が人によって異なる酪農事業には不向きだ。加えて規定では、広大な土地で牛を放牧する「フリーストール方式」での再建しか認められておらず、山間部にまで津波被害が及んだ南三陸町にはそれに見合う土地がない。

「頼みの綱」は国の機関だが、酪農事業を担当する全国酪農業協同組合連合会(全酪連)の補助金は乳牛の購入費用にしか使えず、牛舎の建築を支援するJAでは「借り入れ」しか出来ない。「自宅も流されたため、2重ローンにならないよう、可能な限り補助金で賄えたら」と阿部さんは語る。

南三陸町統計書によると、平成19年度の町内総生産は、酪農を含む農業が7億円に対し水産業が36億円と5倍にも上っている。しかし農業の就業人口は2010年の段階で803人おり、彼らが養う家族の人数も踏まえるとその経済効果は軽視できない。地域の底力を発揮するためにも、こうした支援や補助の隙間を埋めていくことが、地域全体としての復興してくために求められている。

文/齋藤 麻紀子

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