岩手県「応急仮設住宅 周辺調査」住宅再建・就労問題の解決へ向け、ソフト施策の強化を

岩手県が実施した「応急仮設住宅周辺調査」の報告書が公表された。仮設住宅環境への満足度に加え、対人関係や就業の状況、今後の生活の見通しなど、被災者の現状を見ることができる。中でも注目すべき点は、現在焦点となっている住宅再建や就労問題について、地域コミュニティの強化が課題解決につながるという傾向が見られたことだ。

被災地全域で、仮の住まいである仮設住宅から、新たな生活環境への移行が急がれている。今回の調査では、49・1%が今後の住居の確保について「まだ活動を始められていない」と回答し厳しい現状が明らかになった。一方、同じ地域に「継続して住み続けたい」と回答した人の傾向として、コミュニティの関連指標である「団地内での会話頻度」や、「集会所や談話室の利用頻度」が高いという結果が見られた。例えば継続居住意向がある人の団地内会話頻度を見ると、「ほぼ毎日会話する」が51・4%に対し「団地内で会話はしない」が6・6%だった。

居住市町村への今後の居住意向とコミュニティ指標の関連

コミュニケーションの有無は、就業状況の改善にも繋がると推測できる。「プライベートな相談をできる人がいない」と回答したのは、40・50代の男性が45・2%と最も高い。働き盛りのこの層に「無職」が21・5%、さらに60歳未満無職のうち57・3%もの人が「何もしていない」と回答しており、未就業の問題は深刻だ。これについて仕事のミスマッチングが指摘されているが、もう少し分析が可能だろう。仕事情報を自ら取りに行く習慣の少なかった地域では、口コミ効果が大きい。住民に対して個別にコミュニケーションをはかることが求められると共に、コミュニティとの強いつながりがその効果を波及させると考えられる。

コミュニティ強化が住宅再建や就業問題の解決へ寄与することは今回の調査からも明らかだ。しかしこうしたソフト施策は時間を要するもので、効果が直接見えづらい。一方で現在、各自治体は、人口流出防止のために復興基金を財源とした住宅補助政策を打ち出し始めている。復興予算の使い道議論の盛り上がりも、結局は短期で効果の見え易い政策への後押しとなることが推察される。住宅補助の効果を否定するものではないが、限りある財源がより多く、ソフト的な施策へ活用されることが必要ではないだろうか。

今後の住まいの見通し

文/藤沢烈(RCF復興支援チーム)

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