震災の学びをインバウンド観光へ活かす シンガポール東北親善大使プログラム

「シンガポール東北親善大使」フォローアッププログラムの様子

「シンガポール東北親善大使」フォローアッププログラムの様子

震災から約1年半。東北地方では、依然として外国人客数が回復していない。観光庁の調査では、東北6県の今年4~6月の外国人延べ宿泊数は震災前2010年比でマイナス55・9%になった。こうした中、観光庁と日本政府観光局は6月から東北・北関東のインバウンド観光(訪日外国人旅行)プロモーションを開始した。海外7市場9都市における海外旅行代理店との商談会やPRイベントを行うものだ。地震や津波の記憶も新しく、今なお続く原発事故の影響は大きい。東北での外国人客数の回復へ課題は多いが、裾野の広い観光分野における対策の必要性は高いだろう。

今年7月、在シンガポール日本大使館や日本政府観光局シンガポール事務所による「シンガポール東北親善大使」フォローアッププログラムが行われた。これは、昨年8月シンガポールの大学生100人が自国に現状を伝えるために被災地を訪問したが、その際同行した日本人学生を対象に行われたものだ。参加した8名は、震災支援への答礼、観光を専門に学ぶ学生たちへ向けた東北の現状報告や観光PR、昨年の訪日したシンガポールの学生との討論会などを行った。

被災3県の外国人宿泊数は震災により激減討論会では、両国の共通の課題である「危機管理」がテーマとなった。シンガポールでは、自然災害は滅多に起こらないが、テロや病気、金融面での様々な危機は存在するという。特に「非常時における情報の取り扱い方」について強い興味が示された。また、観光地としての東北について、シンガポールの学生からは「東北のイメージがそもそもなかった」、「東北に何があるのか、行って何ができるのかよくわからない」といった声も聞かれた。震災前の2010年時点でも、東北6県の外国人宿泊数は軒並み全国20位以下。国外での知名度は高いとは言えない状況だった。

東北のインバウンド観光の振興のためには、まず知名度そのものを高めていくことが不可欠だが、震災を受けての外国人客数減少は、東北の認知度向上を意味していると言うこともできる。今後は、魅力ある訪問地としての知名度向上のために、景観や伝統文化に加え、地域ならではの知恵やノウハウを観光資源に変えて発信することが有効だろう。

このプログラムで見られたように、震災で大きな「危機」に見舞われ、それに対応してきた被災地の経験・ノウハウを、「危機管理」という一つのコンテンツとすることも可能だ。震災は世界中へ報道され、多くの外国人がボランティアで被災地を訪れた。震災の経験や学びをインバウンド観光のきっかけと捉え、こうしたプログラムを通じて海外のニーズに目を向けることで、観光立国へつながる新たな取り組みが東北から生まれることを願いたい。

1件のコメント

  1. 龍治玲奈 返信

    私どもマイクロソフトへも、一昨日12/27にNYのビジネススクールからの学生訪問があり、震災からの復興についてお話しました。
    とても親身に聞いて下さって、彼らもアクションに結びつけたいのだな、と。
    そのパワーを如何いかすか、皆様と引き続きご相談できればと思います。

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